文・写真:堀井和子
フランスで買った縦15cm 横14cm の小さい料理書。しっかりしたハードカバーで、それぞれの色とタイトルの文字のレイアウトデザインが美しい。
"je fais mon pain" は世界のパン、"je CUISINE vert" は野菜料理、"je fais des fromages" はチーズのレシピが紹介されています。コピーライトは3冊すべて ROBERT MOREL、野菜料理が1983年、その他の2冊は1980年の出版です。
私は、特に野菜料理の本の構成がたまらなく好きだなぁと感じています。
章はAからGまで太い字体と四角のドットで、目次は大文字だけで細い字体、レシピページの料理名は手描きの字、レシピは普通の表記と、ルールに従った使い分けをしてあって、ページの中の文字構成が端整でかっこいいのです。ニンニクや玉ネギ、サラダ菜などの線画のイラストがところどころに入っているだけなのに、料理書としての魅力がぐっと迫ってきます。
"MANGER-VIVRE CUISINER"(1980年出版)は、私が持っているフランスの料理書の中で大事に想っているベスト1か2かもしれません。
もやしを育てる、いちじくを干す、大きな缶と金網を組み合わせてグリルや蒸す料理を、トルティーヤやパンを焼く、バターやチーズを作る、花や葉・実を生かす、使う —— いろいろな食べものを手作りする、挑戦してみるための教科書みたいな1冊です。
ここで取り上げたメニュー、屋外で道具も工夫して作るプロセス写真、スタイリングもフレーミングも自然なのに洗練されていて、今見ても胸がドキドキするくらい素敵。
下右の2冊、雑誌 ELLE の連載をまとめた "Desserts et Pâtisseries" と "Entremets glaces et fruits" は、家庭で作るデザートやお菓子の様子が、気取っていなくて素直で魅力的。古書店で探せるのはこのシリーズかもしれないです。
下左の一冊は "RECETTES DES RECOLTES NATURELLES DE NOS REGIONS"(1981年出版)。野生の果物や花、草を使ったレシピの本。
桑の実のタルト、胡桃のリキュール、オー・ド・ヴィに漬けたさくらんぼ、アカシア花のベニエ、タンポポの葉とベーコンのサラダ・・・・・・etc.
上左は "Amusons-nous à Cuisiner"、料理初心者のための100のレシピが紹介されています。
トマトの肉詰めや挽き肉とじゃがいもの重ねグラタン、グリンピースのフランス風煮込みから、サヴァランや洋梨のチョコレートソースまで、いつ食べても、すっとお腹に入ってしまう優しさが伝わってきます。
昨年の暮れ、宮城に住む弟が地元のおいしい FOOD を少しずつ、あれこれ送ってくれました。
“のり工房 矢本”の初摘み SHIONORI“オリーブ”は、東松島産の海苔と塩釜の藻塩、バージンオリーブ油を使った八切りサイズ。白い御飯にのせて味わった最初の一口に、ハッと驚きました。以前、実家で手巻き寿司をした時、こちらの焼き海苔のおいしさを知ったのですが、味付海苔は普段食べることがなかったので、ちょっと構えてのお味見でした。焼き海苔の香り高さがしっかりしているので、控えめながら、きりっと藻塩とバージンオリーブ油がきいて、絶妙なバランスに感じました。
早速、他の SHIONORI の種類や焼き海苔をインターネットで注文してみました。例えばシンプルなおにぎり、パスタやじゃがいも料理と“オリーブ”の他“梅塩”、“黒こしょう”の SHIONORI を各自好みに組み合わせて・・・という食べかたも楽しそうです。
Profile
堀井和子 Kazuko Horii
1954年東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」