写真:ホンマタカシ 文:加藤孝司 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)
Sounds of Tokyo 14.(Skate park in Komazawa Olympic Park)
子どもの頃に世田谷区の下馬に住んでいたこともあって、駒沢公園は昔もいまもよく行く場所です。別に特別な場所というわけじゃないけど、自分の日常のそばにずっとある「でかい公園」という感じかな。
もともと1964年の東京オリンピックのためにつくった公園だから、いい時代の面影が残っていて、建築もレトロフューチャー的で。その感じが好きですね。
1970年代に放送していた「がんばれ!!ロボコン」という子ども向けの特撮テレビドラマが大好きでいつも観ていたんですが、オープニングシーンに駒沢公園の大階段が登場するんですよ。
本編も時々公園内で撮影していて、通学途中に大階段の上にいるロボコンに遭遇した時は、ものすごくわくわくしたのを覚えています。
駒沢公園って塔のある広場と体育館のあるエリアが陸橋でつながっていて、その間に駒沢通りが通っていますよね。いまはないけど、昔はその陸橋の下に横断歩道があったんです。
小学校2年の時だったかな、そこを渡っている時に交通事故にあったんですよ。その日中に退院ができたので、そんなに大事故ではなかったのですが。
ちょうど友達を迎えに行く途中だったので、病院で治療を受けている間に友達たちが僕の家に集まって勝手に遊んでいて……家に戻ったら、みんなでホットケーキを食べているところだったんです。
僕は顔が腫れていたので食べることができなかったんですけど、それが悔しくて。そういう意味でも、駒沢公園という場所がすごく記憶に残っています(笑)。
中学で渋谷に引っ越してからは駒沢公園に行くことがなくなりましたが、大人になって三軒茶屋で暮らすようになってからは、子どもを連れて遊びに行くようになりました。
自分が子どもの頃、オリンピック記念塔のそばの売店でゲイラカイトを買ってもらって中央広場で凧あげをしたんですけど、自分の子どもとも同じことをしましたね。都心では凧あげができる場所ってなかなかないので、そういった意味でも貴重な場所だと思います。いまも凧あげできるのかなあ。
そうそう、僕がはじめて二輪の自転車に乗れるようになったのは、公園内にある「りんりん広場」だったんですけど、子どもに自転車の乗り方を教えたのも同じ場所でした。2世代でりんりん広場にお世話になっているってことですね。
子どもも大きくなったし最近はあまり行くことがなくなったけど、週に2~3回は車で駒沢通りを通ります。駒沢公園の大階段あたりって、通りをはさんで風景が左右にひらけていますよね。車で走っていても、階段の向こうにモダンな建物が見えて気持ちがいいんですよ。時々「昔ここで車にはねられたなあ」と思い出したりしてね(笑)。
このあたりは、昔はところどころに畑や田んぼがあったり“東京の田舎”という感じでのんびりしていたんです。いまも少し、その感じは残っていますけどね。
生まれ育った場所だから当然自分にとっての原風景になっていて、それが自分の作品に与えている影響は、きっとあると思います。
渋谷や六本木、目黒にも住んだことがあるけど、馴染みがある場所といえばやっぱり駒沢あたりになるのかな。
最近の東京……? 街並みはすごく変わりましたよね。ずっと建てたり壊したりしているのが東京だけど……でも、建物だけ変わって中身はどこも一緒。ピンとこないというか、どうなんですかね。
渋谷に「MIYASHITA PARK」ができた時に用事があって行ったんですけど、コロナの影響もあってガランとしていて、かなり非日常感がありました。
去年の春、3月にライブで中国に行く予定があって楽しみにしていたんですけど、コロナの影響で中止になったんです。それ以来、音楽を取り巻く環境は変わらず厳しいけれど、自分としてはライブができないならいまは曲をつくる期間かな、と思って、いろいろやっているところです。
小山田圭吾 Keigo Oyamada
1969年東京都生まれ。'89年にフリッパーズ・ギターのメンバーとしてデビュー。バンド解散後、'93年にCornelius(コーネリアス)として活動開始。'98年『FANTASMA』をマタドール・レコードからリリース。以降、国内外のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広く活動中。2017年には約11年ぶりとなるオリジナル・アルバム『Mellow Waves』をリリースし、同年から2019年までワールドツアー「Cornelius Mellow Waves Tour」を行った。また「デザインあ展」、「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」で音楽ディレクターを務めるなど、活動の幅を年々広げている。
www.cornelius-sound.com
東京と私