文・写真:堀井和子
銅の素地を金槌で叩いて成形し、
“うつわ楓”で6月に開かれた展の初日に伺って見つけました。
斜めにして光をあてると明るい銀色に反射しますが、その光りかたはシックです。トレーの表面は、金槌の跡、擦れてできる細かい線、下の素地が擦れて見える墨色が幾分ハードな印象ですが、漆で言うと
テーブルクロスの上に置くと光を返さずに、雷雲みたいなグレーに色が沈みます。安達知江さんの雲のガラス皿(連載「いいもの、みつけました!」第68回参照)をのせたら、ドキッとするくらい美しく目に映りました。グラスに生けた野草やガラス皿に盛った無花果、プルーンなどいろいろのせてみたくなる、面白い表情のトレーです。
松岡ようじさんのグラスは口径8.5cm 高さ8.5cm。
口径から内側へ1cm、斜めに落として磨いたような縁を見て、ジャムの瓶に似ていて何だか懐かしいフォルムに感じました。
6月末に杏のジャムを煮て、早速このグラスに。
sept septième のエッセイで “杏のコンフィチュールみたいなオレンジ色” のコットンシルクシャツについて書きましたが、かなり近い色合いに煮上がりました。(画像は白いトレーの上なので、深めの色に写っていますが。)
夏に実家の庭で採れるブルーベリーやブラックベリー、散歩中に拾った椎の実や団栗を無造作に入れたら、“その日見つけたいいもの展示瓶” としても活躍しそうです。
2月に開かれた古賀充さんの relocate 展で、小さな椅子の作品を選びました。
新しい GALLERY CLASKA の空間に足を踏み入れて、見廻した一瞬のうちにこの椅子に引き寄せられました。こんなふうに、ピントがぴたっと合うようにものを捕らえられた場合は、迷わず買うことに。
幅25cm 高さ38cmで、白木に銀色の釘、素直な木目が美しい。軽量なので画鋲1個で我家の壁に掛けられることに気づきました。
イエナの紙袋の額の隣に掛けたところ。
こちらは玄関を入った壁面、いくつかの額の間のスペースにぴったり収まった様子。以前吉川和人さんに製作していただいた木箱とも雰囲気がよく合っています。
Profile
堀井和子 Kazuko Horii
1954年東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」