文・写真:堀井和子
前の晩から降り続けた雨が上がった午前11時、新宿御苑は人が少なく、ひっそりとしていました。
樹木や芝生は雨露を含んで、全体が澄んだ空気に包まれていて、いつのまにか外国旅行をしているような気持ちに。
カラスが、誰に邪魔されることもなく、気ままな週末の朝ごはんに集中していました。家の近くでカラスに遭遇すると、思ったより大きな体つきと光るくちばしが恐くて、ビクビクしながら、すれ違っています。
雨の後の新宿御苑のカラスは、飄々と1羽で楽しそうにしていて、絵本の主人公になれるくらいカワイイ鳥に見えました。
それにしても、雨の後の樹々の緑の美しいことといったら・・・。
勢いがあって、
見るたびに、風が吹き抜けるような爽快さを感じます。透明なガラス面に描いた絵画のような迫力も。
手描きの文字をぐるっと周囲にプリントした水差しは、1990年頃に BAGEL で製作したもの。ものが好きな友人と、クラブ活動みたいに試行錯誤を重ねていました。
フランスのリキュールのラベルをお手本に、私が字を描いて版を作ってもらいました。筆でアルファベットを綴るのはむずかしかったけれど、何度も練習しているうちに、手首を浮かせて軽やかに線を描くコツがつかめたこと、思い出せます。
初めてガラス器に向っていった頃のデザインは、やっぱり初々しいなと今、羨ましく見つめてしまうのです。
松久永助紙店の Minowashi Sox は、紙糸(第30回参照)を買った時、一緒に生成り色を買って、今回あまりの履き心地の新鮮さに、2足目のグレーを買い足したところです。
パピエ・ラボの江藤さんがラベルのグラフィックデザインをなさったそうで、和紙を撚って糸にすることで、強度があがると説明を受けました。
何回か履いては洗ううちに、シャリッと軽快な感触がやみつきになり、他のソックスに手が伸びなくなっていました。
ソックスの足首について、私はグズグズもきつめも苦手です。こちらのソックスは洗濯をくり返しても、程よくきちんとした佇いを保ちます。
このシャリシャリ感と風通しのよさは、実際に履いてみないとわからないかもしれませんが、日本の蒸し暑い夏を乗り切る強い味方になりそうです。
Profile
堀井和子 Kazuko Horii
1954年東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」