今回は中国・上海で暮らす2匹のオス猫の話。日本とはちょっとだけ異なる、中国の飼い猫事情とは?
文:加藤孝司 写真:増井辰一郎 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)
猫:ニーチェ(3歳、オス)、カフカ(3歳、オス)。好きなおもちゃは紐状のもの。
男:増井辰一郎(現代アート、建築、展覧会などの企画、プロモーションをする「コダマシーン」代表。最近の仕事は「TOKYO TORCH 常磐橋タワー」内パブリックアートのキュレーション。上海在住。
Instagram:@shinichiro.masui
増井さんはニーチェとカフカという2匹の猫と暮らしていますが、出会いについて教えてください。
- 3年ほど前、友人の同僚が塀から降りられなくなった生後間もない子猫を見つけたのですが、それがニーチェでした。以前からその友人に猫を飼いたいと話をしていたこともあり紹介してもらい、妻と話して迎えることを決めました。その後、ニーチェが一匹だと寂しいかな、ということもあって、妻が保護団体と連絡を取り合ってくれてニーチェの兄弟としてカフカを迎え入れました。
そうでしたか。名前はドイツの哲学者であるフリードリヒ・ニーチェ、チェコの作家フランツ・カフカに由来していると想像するのですが、文学的な名前をつけた理由を教えてください。ちなみに、我が家のジャスパーはデザイナーのジャスパー・モリソンさんにあやかったのですが、ニーチェとカフカにどんな思い入れがあったのでしょうか?
- 妻からの提案でした。昔の哲学者と文学者から名前をとろう、ということでこの名前にしました。
性格の違いはありますか?
- ニーチェはやんちゃで寂しがりや、カフカは落ち着いていて大人な性格です。でもニーチェの方が臆病な感じがしますね。
ニーチェとカフカは普段どこで過ごすことが多いですか? 家でのお気に入りの場所と好きなおもちゃも教えてください。
- 普段はクローゼットの中とか上、またはベッドの上に居たりします。我々が家に居ると、近くの床やキャットタワー、椅子に居ることが多いですね。紐状のものが好きで反応しますが、比較的飽きるのが早いように思います。
増井さんはもともと猫好きだったんですか?
- いや、もともとはあまり猫に対して興味はありませんでした。2010年に働いていた上海の会社で、スタッフが真っ白い猫を拾ってきたことがありました。しばらく事務所で飼うことにして、スタッフがいる時間は事務所の中で、不在のときはドアの外に置いていた猫用の小屋に移動させて飼っていました。深夜まで仕事をしていたりすると、たまに近くに来てくれることがあって可愛いなあと。その時に、ずいぶん猫を気に入った記憶があります。その時の猫はメスで、事務所にいた1年の間に3回子どもを産んだんです。スタッフ総出で引き取ったり、もらってくれる人を探したりしていました。
みんなで可愛がっていたのですね。
- はい。ただ、親猫から子どもを引き離すようですこし辛かったです。最終的には親猫はスタッフが引き取ったのですが、そんなこともあっていっそう猫が好きになりました。
一緒にいたら、なおさら好きになっちゃいますよね。猫のどんなところが好きですか?
- 自由気ままなところです。あとはいつ見ても癒やされますし、ふわふわしているところも好きですね。
現在増井さんが活動の拠点とされている中国でも、日本と同様猫が人気だと聞いたことがあります。増井さんがお住まいである上海の猫事情を教えてください。
- 僕は中国ではじめて猫を飼ったので日本の事情はわからないのですが、中国にも保護団体はあったりしますし、仲の良い友人がそういった活動もしているので、猫の話はよく聞きます。
なるほど。普段はどんなご飯をあげていますか?
- 基本はカリカリで、「whiskas」というアメリカのブランドのものをあげています。中国はIOTが盛んなので、給餌器もネットと繋がっていて、外出中もスマホを通して給餌できたりします。留守中にもカメラがペットを認識すると録画してくれて、携帯に通知が送られてきたりしますので安心です。
日本でもカメラ付きトイレや、ロボットカメラを導入している人も増えているみたいですね。猫の留守番問題はみんな気にしています。中国のお友達やお知り合いで猫を飼っている方はいますか?
- 最近増えている気がします。お互い留守中に猫の世話をお願いしたりすることもあります。仕事はデザインやアート、建築界隈の人が多いですが、猫を飼っている人同士だとついつい猫の話ばっかりになりますよね(笑)。
確かに!
- 猫の会というクローズドなグループもあり、そこでもいろんな情報交換をしています。
猫は犬と違って散歩に行かないので、リアルな場での飼い主同士の接点って意外とないんですよね。あと、日本では近年保護猫の活動が盛んで、それもあって地域で暮らす猫が少なくなった気がします。増井さんが暮らす上海は、外で暮らしている猫はいますか?
- いま住んでいるマンションのエリアには、結構野良猫が居ますよ。いつも誰かが餌やお水ををあげているようです。他の場所でも結構見かけます。
まだまだいるんですね。カフカとニーチェは中国語と日本語のどちらに反応するように思いますか? というのも我が家の愛猫ジャスパーは英国に起源をもつブリティッシュショートヘアなのですが、僕の言葉を無視することが多く、ある時ふと英語で話しかけてみたら(驚いたように)いつも以上に反応したことがあったので(笑)。
- 基本的には日本語でしか話しかけないので、わかりませんが……。ただ、最近2ヶ月ほど、我々が出張で家を空けていたのでその期間は中国人のシッターさんに来ていただいていました。最初こそ人見知りをしていたようですが、2ヶ月が経つ頃には結構なついていました。シッターさんは中国語で話しかけていましたが、彼女から送られてくるビデオだと、猫たちがよく声を出していました。どちらかというと慣れの問題が大きいのかなと思います。
それは面白いですね。お仕事柄出張も多いと思いますが、留守にしている間のお世話はやはりシッターさんが多いですか?
- はい。それと友人にお願いして、家にご飯をあげに来てもらうようにしています。
普段から猫も知っているお友だちだと、猫も寂しくなくていいかもしれませんね。久しぶりに会った時のニーチェとカフカはどんな反応をしますか?
- すごく訴えかけるように鳴いてくるのですが、なんとなく「俺たちを放ったらかしにして、何しとったんや~!」と責められる感じです(笑)。
可愛いですね! 離れていると増井さんも寂しいですか? 僕は外で食事をしていたりしてもジャスパーを思い出してたびたび家に帰りたくなるのですが、増井さんはニーチェとカフカについてどんなことを思いますか?
- そうですね、やはり彼らは無事にやっているだろうか、という感じで心配になりますし、会いたくなります。カメラでリアルタイムで動いたり寝ていたりするのを見るとホッとします。
カフカとニーチェの健康について、気をつけていることがありましたら教えてください。
- あまり特別なご飯をあげないようにしていることくらいですかね。それと量もあげすぎないようにしています。運動については太っているわけではないこともあり、今のところ気を使っていないです。
増井さんにとって猫とはどんな存在ですか? 一緒に暮らすニーチェとカフカが増井さんにとってどんな存在か、こんなふうに過ごしてほしいなあという思いも合わせて教えてください。
- やっぱり近くに居ると常に猫たちの気配をなんとなく感じて、それが自分にとっては心地よく感じます。家という限られた空間の中に彼らは居るので、それが本当に幸せなのだろうか、というのはちょくちょく考えます。ですが、愛情を注ぎながらこれからも一緒に過ごしていきたいと思っています。自由気ままに、好きなように過ごしてほしいですね。