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猫と男 東京で生きる男と、共に暮らす猫。ふたりの距離感から垣間見える、唯一無二の物語。

番外編:猫と男の必需品
Vol.1 「カメラ」/後編

猫と暮らす男の日常を、言葉と写真で紹介する連載「猫と男」。
前回に引き続き、「猫と男の必需品」をお届けします。

写真・文:加藤孝司 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

カメラ

愛する猫との日常は、どんなひと時でもついつい写真に撮りたくなってしまいます。
カーテンの裏の日向でまどろんでいる姿や、目をまんまるにしながら夢中で遊んでいる姿、ご飯をおねだりしている姿もご飯を焦らすとわかっていながら、ついつい写真に撮っておきたくなるかけがえのない日々の情景です。

そんな時にどんな道具を使って記録をするのか。男ならいつでも道具にこだわり抜きたいところ。そんな猫と男の必需品として、前回はデジタルカメラとスマートフォンの内蔵カメラで撮る「写真」を考えてみました。
スマートフォンで綺麗な写真が誰でも簡単に撮れるようになったことで、撮った写真を誰かに送ったり、インスタグラムやフェイスブックなどでシェアをすることも容易になりました。猫に限りませんが実際には会ったことがなくても近い趣味をもった人同士がSNS上で繋がったり、リアルに友だちになることも少なくない時代になりました。
写真は現代ではただ見たり鑑賞したりするだけではなく、人と人とが繋がるツールになっているとも言えるでしょう。

今回は前回の予告通り、「デジタルカメラ」とフィルムを使う「フィルムカメラ」で撮る猫写真について、それぞれのカメラで撮った写真を見比べながらざっと見ていこうと思います。

デジタルカメラとは文字通りデジタル写真を撮影するカメラのことで、主に液晶パネルを搭載し、ファインダーだけでなくその液晶パネルで撮影画像を確認しながら撮影することができるという機能を持ったカメラです。
逆にフィルムカメラはファインダーに映る像を頼りに撮影をするカメラですが、実際にどんな写真が撮れているかは、フィルムを現像してプリントをするまでわかりません。

フィルム
手前が35mmフィルム、奥が120フィルムです。

「フィルムカメラとは?」。
フィルムカメラが少数派になってしまった現代ではそう思う方も少なくないと思います。一番わかりやすいのがコンビニや観光地の土産物屋さんで売っている「写ルンです」ではないでしょうか。
「写ルンです」は、1986年に「富士フイルム」が開発した、“レンズ付きフィルム”と呼ばれる使い捨てカメラです。発売時は専用自販機も登場するほど親しまれ、みなさんも学生時代などに一度は使ったことがあるカメラではないでしょうか。写ルンですは、近年デジタルカメラやスマホ・カメラとは一味違う雰囲気たっぷりの写真が簡単に撮れるカメラとして、若い人を中心に一部で人気が再燃している今年で誕生から35周年を迎えたロングセラー商品です。

この写ルンですが使用しているのが「パトローネ」と呼ばれる金属製のケースの中にロール状に収納された135フィルム、もしくは35mmフィルムです。これは街の写真屋さんで手軽に現像ができる、フィルム写真では最も身近で一般的なフォーマットになります。

カメラ
僕が使っているフィルムカメラ。35mmのライカと120フィルムのマキナとではカメラ本体の大きさにも違いがあります。

フィルムカメラで使うフィルムにはこれ以外にもいくつかありますが、より大きなフィルム面を一枚の写真に使う120フィルム(ブローニーフィルム)というものがあります。
これは35mmフィルムより大きいという意味で「中版」と言われています。さらに面積が大きくより特殊なフィルムを使う「大判」というものもあります。

35mm、120、大判とフィルム写真に使うフィルムには種類がいくつかあり、これはデジタルカメラ時代においてはイメージ(被写体)を記録するセンサーの大きさに置き換えることが可能です。その意味ではいわゆる「コンパクトデジタルカメラ」は小さめなサイズのセンサーを搭載しており、コンパクトデジタルカメラより大きなセンサーを搭載してより精細な写真を撮ることができる「デジタル一眼レフカメラ」や「デジタルミラーレス一眼カメラ」と大雑把に分けることができます。

僕が猫の写真を撮る時に使用しているのは、デジタルカメラが「ライカM10(35mm版)」、フィルムカメラがライカ「MP6(35mm)」、120フィルムの「マキナ67」というものになります。

猫

こちらがデジタルカメラで撮影した写真になります。いわゆるJPEGの“撮って出し”です。寝ている時ならじっくりピントを合わせることができます。

猫

これが35mmのフィルムカメラで撮影したものをデジタルデータにスキャンしたもの。爪とぎになっているカーペットが毛羽立っているのがわかります。

猫

こちらが、120フィルムで撮影した写真をデジタルデータにスキャンしたもの。縦横の比率が6×7であることから「ロクナナ」と言われるもので、35mmのフォーマットに比べて正方形に近いかたちになります。舌をペロッとした瞬間が撮れたのは本当に偶然です。こういう写真は狙って撮ることはできません。

120mmフィルムでも6×7のほかに、35mmのサイズに近い6×9や、6×4.5、6×6という正方形のものもあります。いずれも120フィルムで撮影したものは、同じフィルムでも10枚、8枚、16枚、12枚と撮影できる枚数が異なります(カメラの機種によって撮影枚数が異なるものもあり)。それぞれの画質の特性や、なぜ撮影枚数が違うのかはネットなどで調べてみてください。

撮った写真がすぐに確認ができるデジタルカメラでは、目を瞑ってしまったら削除したり撮り直すことが容易ですが、フィルムカメラでは目を瞑った状態はほぼ永久に記録されたままになります。いわゆる失敗写真です。
ですが、これは写真の面白いところでもあるのですが、あとから見返すと失敗写真にも、その時にしか撮れない面白さがひそんでいる場合があります。
動いてボケてしまった猫の顔がその時の躍動感や、カメラを通して猫と向き合った時間を思い出させてくれたりするのです。

もしこの世の中に目を瞑った写真や、ぼやけているといった失敗写真がなくなって、いわゆる「成功した写真」しか残らないとしたら。世界が少し味気なくなるのでは? と言ったら大げさかもしれませんが、少しつまらない気も僕はします。
前回も少し書きましたが、ピンぼけ写真など、写真に失敗というものがそもそもあるのかどうか、何を失敗と思うのかも人それぞれだと思うのです。

猫
ピントは合っていない写真だけれど、なんとも愛おしい小さい頃のジャスパー。

デジタルカメラとフィルムカメラのもうひとつの大きな違いは、デジタルカメラでは静止画だけでなく、機種によっては動画も撮影できることです。スマートフォンの動画機能とどう違うかといえば、一番大きなメリットは普段デジタルカメラで撮影をしている同じ機材で「動画」を撮ることができるということです。こだわりの焦点距離のレンズや、レンズの被写界深度を利用して、背景がぼやけた映画のような、トロンとしたなんとも雰囲気のある動画を撮影することもできます。
僕がもっているデジタルカメラには動画機能がついていないため、日常的に動画を撮影することはありませんが、自分が好きな交換レンズでジャスパーの動画が撮影できたらいいだろうなあと思うことはたまにあります。

デジタルカメラにしてもフィルムカメラにしても、簡単、簡単と書いてきましたが、猫の写真を撮るのはじっとしていないし動き回るしで、思うような写真を撮ることはなかなかできるものではありません。
だからこそ、お気に入りの一枚が撮れたら、デジタルカメラでもフィルムカメラでもデータでみるだけでなく、ぜひ紙に焼いてみてください。額装も富士フイルムの「WALL DECOR(ウォールデコ)」など手軽に上質な額装をつくることができるウェブサービスもあります。猫の可愛さと写真本来の楽しみの両方が味わえると思います。

僕がフィルムカメラで写真を撮る理由は、猫の写真に限らずですが、「撮れていても、撮れていなくてもいい、撮れていたらラッキー」くらいの大きな気持ちで写真を撮ることを楽しめることだと思っています。そのようなことをある有名な写真家も言っていました。

猫

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2021/11/10

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