文・写真:堀井和子
5月に LE CAFE DU BONBON の久保田さんが、ヘーゼルナッツのクッキー“ビスキュイ・ピエモン”を送ってくださいました。
私は久保田さんが焼く“ビスキュイ・ド・サヴォワ”が大好きですが、今はカフェをなさっていなくて、1台を注文することもなかなかできないでいました。
ビスキュイ・ド・サヴォワはフランスのサヴォワ地方の伝統的な焼菓子で、外側は極上の美しいきつね色で香り高く、中はふんわり、中央はようやくビスキュイに変わったという絶妙なやわらかさ。 BONBON のカフェでは、その日の焼きたてがいつも味わえました。
同じサヴォワ地方の郷土菓子 “Baci di Dama” に魅せられた久保田さんが、今回、 BONBON の一品としてスタートさせたのが“ビスキュイ・ピエモン”だそうです。
ヘーゼルナッツのお菓子というと、ナッツの濃厚さやバターの強さが後口に残ったりする場合がありますが、“ビスキュイ・ピエモン”は違いました。ヘーゼルナッツのコクと香ばしさ、口へ運ぶと、ほろっと
左は“ビスキュイ・ピエモン”が入った缶、右は BONBON のお菓子の名前をデザインした印刷物。グラフィックデザイナー、アートディレクターの立花文穂さんが手掛けた文字のデザインがすごくカッコいい。そして BONBON のお菓子の個性によく合っていると思いました。
この缶のピンク、甘いだけではない、しっかり芯のあるクールなピンクですね。地色にのせた文字のデリケートなニュアンスにもハッとします。
昔、立花さんの個展で、作品集のようなカレンダーを買ったことがあります。紙片を貼り付けた針金のモビールみたいな作品を、モノクローム写真で構成したものです。
繊細な針金の線と、あちこちに浮かんだ文字にドキドキしましたっけ。
“ビスキュイ・ピエモン”はこれからの季節、冷蔵庫に保管し、白ワインといただいても美味しいかと。
グラスに注いだのは、昨晩飲んだサヴォワの DUPASQUIER の白。遅摘みしたシャルドネを用いて作られた、やわらかい味わいのワインです。同じ地方のせいか、相性がよい気がしました。
SANCERRE LA COTE BLANCHE 2020 SOPHIE BERTIN のワイン。
ソーヴィニヨン・ブラン100%の白ワインで、爽やかでいながら、どこかシニカルなほろ苦さが面白く、酸味と奥行きが心地よく飲めます。
グレー地に白で Sancerre 、黒の細い線で Sophie Bertin 、大きな B の文字部分は切り抜いたエチケットのデザインが、ワインの味とすごく合っていて魅力的。ネックも同じグレーを使っていて、味わいも瓶のデザインも贈りものにしたくなるワインです。
ロゼは瓶が透明で、これがまたとても美しい。以前、友人が「近くのベーカリーの作りたてのカツサンドが美味しいから」と用意してくれた昼食に、 SOPHIE BERTIN のロゼを手土産に持って行ったことがあります。カリッとした香ばしい揚げたてのカツにルヴァンのパン、軽やかでいて奥行きのあるロゼの組み合わせ、また味わってみたくなりました。
Profile
堀井和子 Kazuko Horii
東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」