メイン画像
こどもとわたし

06.
小さな手には小さなものを

写真・文/落合真林子 (OIL MAGAZINE/CLASKA)

Profile
落合真林子 Mariko Ochiai
大学卒業後、 出版社勤務を経て現在CLASKAの企画編集、 web magazine 「OIL MAGAZINE」 編集長。 東京で夫、 小学生の娘、 猫2匹と暮らしている。 趣味は読書とドラマ鑑賞。


飯椀は、 どこかセンチメンタルな存在だ。

おそらく多くの家庭がそうかもしれないが、 私の実家では家族全員がそれぞれ決まった飯椀を使っていた。
実家を離れてから随分時が経つが、 自分や家族がどんなものを使っていたかを今でも思い出すことが出来るくらい、 食卓の情景として深く記憶に刻まれている。

「色々あるうつわの中でも飯椀は特別なもの。 毎日同じものを使って直接手で触れて食事をするものだから、 だんだんと “使う人そのもの” に育っていくんです」。

今から10年以上前に或るうつわギャラリーの店主と話をしていた時、 その方がこんなことを言っていた。
多少ニュアンスは違ったかもしれないが、 およそこのようなことを仰って、 なるほど確かにそうかもしれないと私は妙に納得したのだった。


子どものうつわ
娘が選んだ新しい飯椀。 二子玉川の「KOHORO」にて。

最近、 娘の飯椀を新調した。
気がつけばご飯を食べる量が私とほぼ変わらなくなり、 「おちゃわんが小さい」 と訴えてくるようになったのだ。

これまで使っていたものは確か3歳か4歳の時に買ったものだったから、 約5年ぶりのリニューアルということになる。 前回同様本人に選ばせようと思い 「好きなものを選んでね」 と、 うつわ店に連れて行った。

今回選んだのは少しシャープなラインでキリッとした印象のもので、 容量もたっぷり。
コロンとした丸みがあって可愛らしい印象だった初代飯椀とは異なるキャラクターだ。

家に帰って新旧を並べてみたら ‟幼児から少女への成長” という感じで、なんだか感慨深くなった。

こどものうつわ
3、4歳の頃に娘が選んだもの。 福島県に工房を構える作家、五十嵐元次さんがつくった子ども用の飯椀。 奇をてらわない綺麗なかたちで、私も気に入っていた。


うつわが好きだから、 もう新しいものは必要ないと分かっていながらも良いものに出会うとついあれこれ買い求めてしまう。

今回のことをきっかけに我が家の食器棚を改めて眺めてみると、 出番が多いもの・少ないものがかなりはっきり分かれていることに気がついた (中には、 買ったことすら忘れていたものもあった) 。

冒頭で触れたギャラリー店主の言葉を思い出すならば、 ほぼ毎日使っているであろう飯椀や漆の汁椀は食器棚の中で堂々とした納得の佇まいをしているし、 自分たちの “念” みたいなものが籠っている気すらしてくる。

他の追随を許さない、 絶対的エースたち。

家族のうつわ
漆の汁椀は、 CLASKA Gallery & Shop "DO"の一部店舗でも取り扱っている仁城逸景さんのもの。 娘用のものは小ぶりな大きさなので、 こちらもそろそろ買い替えのタイミングか。


かつて娘のための飯椀や汁椀を買った時、 「長く使うだろうし、 そこそこ値も張るし、 大は小を兼ねるということで大人用を買ってもいいのかな」 と考えた。

でも、 そうしなくて良かったなとつくづく思う。
幼い娘の面影や小さな手を思い出させる愛しい存在を食器棚で温めていく、 という楽しみができたからだ。

次に飯椀を新調するのは何年後なのだろう ?
すぐに割ってしまわないことを祈りつつ、 娘の手の中で飯椀が育っていく様子を見守っていきたいと思う。

家族のうつわ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

2023/06/28

  • イメージエリア

  • テキストエリア

    CLASKA ONLINE SHOP

    暮らしに映えるアイテムを集めた
    ライフスタイルショップ

    CLASKA ONLINE SHOP