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三井嶺(建築家)

写真・文:久家靖秀 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

Profile
三井嶺 Rei Mitsui

愛知県生まれ。2006年東京大学工学部建築学科卒業。08年同大学大学院修士課程(日本建築史専攻)修了。08~15年坂茂建築設計。15年三井嶺建築設計事務所設立。受賞歴に「Under 35 Architects exhibition 2017」、住宅建築賞(2021年)入賞など。
https://reimitsui.com


三井嶺
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On going place

人間の脳は、既視感のあるものを認知的に消去するそうです。
例えば道を歩く時、ガードレールや電柱を意識する人はほとんどいないですよね。

「存在を消す」というのは、自分にとって大きなテーマ。
たとえば茶室を設計する時、まずはお茶、次にそこに居る人が際立つように、
認知的に消える仕掛け(自然素材である土壁のような)を施すことによって、ニュートラルな空間をつくり出します。

イメージがなければ具現化はできないので、
発注者の方が考えていることを取材しつつ、
言葉に表れないことまでをシャーマンの様に想像して、
“いい感じに消える場所”をつくります。

これは茶室やアトリエをつくる時に限った話ではなくて、日常の住居も同じ。
「存在を消す」ということでいうと、例えばヨセミテ国立公園内の岩窟みたいな所でも快適に暮らせるかもと思ったりしますが、自然のままでも心地いい場所はそうそうありません。やはり建築は、人間社会に必要なものだと思っています。
だからこそ、人の認知に変なかたちで引っかかる事のない、優しくて、上手に存在感を消すことができる建築を目指しています。

住居もアトリエも「On going」、つまり現在進行形の場所であることを前提に、
空間の調整をしていきます。

“図面に潜る”と表現するのですが、図面を真横から見るとホログラムの様にイメージが立ち上がってくる。
そこに身を置きながら、料理のアク取りやゲームのバグ取りの様に認知エラーをひたすら取っていく作業の上に、ニュートラルな空間が成立するのです。
方向性が無い、ただの真っ白い空間にならない様に対話をしつつ、
その場所そのものの声(歴史)も聞きつつ、
出汁をとる様に、細かな作業を延々とやります。最近は、これ(3Dゴーグル)があるから便利ですね。

「存在を消す」というテーマは建築に限ったことではなくて、例えば紙でつくったこの花器も。
もとは濃淡が均一な一枚の紙なのですが、
組み立てていくとある瞬間、濃淡が消えて真っ白にしか感じられなくなるんです。
ちょっとわかりにくいですかね?
脳の認知のズレによって影が消えてしまうという、人間の脳の仕組みを逆手にとった作品です。この花器、存在消えかけてませんか?
ちょっと、厨二病入ってるかもしれませんね(笑)。

三井嶺

2022年 東京都渋谷区


久家靖秀 Yasuhide Kuge

写真家。主な作品に、写真集『アトリエ』(FOIL)、『Mnemosyne』(HeHe)、『ニッポンの老舗デザイン』(マガジンハウス)、『デザインの原形』(日本デザインコミッティー)など。美術、工芸、デザイン、舞台芸術まで創造の現場を撮影し続けている。
https://kugeyasuhide.com/


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2022/03/01

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