暖かな日差しが部屋いっぱいに降り注ぐ、ひだまりのような部屋で暮らすところてん。猫を飼うのははじめてだったという森田さんに愛されて、おだやかな毎日を過ごしています。まずは、可愛らしい名前の由来から話を聞きました。
写真・文:加藤孝司 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)
猫:ところてん(4歳/メス) 好物は魚系のおやつ、好きなおもちゃはプロジェクター。
男:森田恭輔 会社員。趣味は映画鑑賞とスポーツ観戦。
名前がユニークですね。
- この子を迎え入れる前はハムスターを飼っていて、どこか和菓子のようなフォルムだったので「あんころもち」という名前をつけていました。あんころもちが亡くなって一ヶ月くらい、まだ寂しい気持ちの状態でところてんを飼いはじめました。それでこの子にも、和菓子っぽい名前をつけたという経緯があります。
そうでしたか。
- ひらがなで日本らしい名前がいいなと思って。ほかにいくつか案があったのですが、ところてんになりました。
普段はなんと呼んでいるんですか?
- 「てんちゃん」です。周りのみんながそう呼びはじめたのがきっかけでした。いつしか、そっちのほうが普通になって。
ハムスターのあとになぜ猫だったのですか? ところてんちゃんは「エキゾチックショートヘア」という猫種だそうですね。
- もともと猫は好きだったのですが、猫を飼うことは想像がつきませんでした。この子には、ある日ふと入ったペットショップで出会いました。もともとエキゾチックショートヘアという猫種が好きだったのですが、はじめて見た時、この子が出すパワーが凄くって。もう運命的に「迎え入れなきゃ」と思ってしまいました。
迎え入れることはすぐに決めたのですか?
- いえ。ものすごく考えました。大切な命ですので、その時の勢いで決めるものではないと思って。でも家に帰ってからも、この子と一緒に暮らすことが頭から離れませんでした。断りに行くつもりだったのですが、もう一度会ったらだめでしたね。目が合った瞬間に「迎え入れます」と(笑)。
ところてんちゃんの性格は?
- ペットショップで見た時から、マイペースだなという印象でした。おっちょこちょいで愛らしくて。僕の性格もマイペースなので、気が合うかなと思いました。
この部屋は猫が暮らしやすそうですね。
- 2年前に、妻とところてんと引っ越してきました。新しい家を探す第一条件は、猫にとって良い環境である、ということでした。この家はペット共生マンションなんです。床が防音になっていたり、爪とぎしても張り替えやすい壁など部屋のつくりもそうですが、マンション全戸がペットを飼っている方で、それも大きな決め手になりました。
やっぱりそうでしたか。お部屋を見た時から愛猫のことを優先して選んだんだろうなあというのが伝わってきました。
- はい。僕の人生は、ほぼ猫優先です(笑)。人間は我慢できますからね。
ところてんちゃんは小柄でふっくらしていますが、エキゾチックショートヘアの平均体重はどのくらいなんですか?
- 毛が長いので大きく見えるのですが、成猫で3〜4kgだそうです。てんちゃんは半年前まで3.5kgだったんですが、この間計ったら4.5kgでした。自粛期間中にコロナ太りしてしまいました(笑)。
ところてんちゃんは、恭輔さんにとってどんな存在ですか?
- 僕にとっては赤ちゃんみたいな存在ですね。家に帰ってくると玄関まで走ってきて、“撫でて”とお腹を出してひっくりかえったり……。映画を観る時も寝る時も、僕のどこかに触れていると安心するみたいです。甘ったれの極みですね。妻との3人暮らしなのですが、てんちゃんの中では役割分担があるみたいで、奥さんはご飯係みたいになっています。
うちでは逆で、ジャスパーは奥さんにべったりで、僕はトイレ掃除係です。
- 家それぞれで違っていて面白いですね。
トイレ掃除を任せてくれているから頼りにしてくれているんだと、良い方向に考えるようにしています。
- 僕もです。なんでもポジティブに考えますよね。
猫ってふにゃふにゃで柔らかいし、弱い存在じゃないですか。僕らの接し方で猫の一生が変わってくると思うので、すべてのことに慎重になりますよね。
- わかります。当たり前だけどドアを静かに閉めたり、気を使うことが習慣づけられるというか、それが自然になりますよね。
ところてんちゃんと出会って、恭輔さん自身が変化したことってありますか?
- もともとてんちゃんを迎え入れる前は、友達と飲みに行ったりふと旅に出ることが度々ありました。自分の時間中心で動くことが多かったのですが、迎え入れてからは“家に猫がいる”という安心感もありますし、ご飯やトイレ掃除などてんちゃんのことが最優先になりました。それこそ、この家の使用人のような気分というか、家中心の生活に変わりましたね。
外にいても、なんか会いたくなっちゃいますよね。
- ホテルクラスカでの結婚式の時もそうでした。式と二次会が終わってそのままホテルに宿泊する流れになっていたのですが「てんちゃんのご飯の用意とトイレ掃除をしなきゃ」と思って……。その日はヒョウが降るような大荒れの天気だったのですが、妻をホテルに残して一旦家に帰りました。で、終電ぎりぎりでホテルに戻って(笑)。
周りにも猫と暮らしているお友達は多いですか?
- はい。猫だけではなく爬虫類だったり、動物と暮らしている友達は多いですね。それと僕が猫を飼いはじめてから、“楽しそう”と、猫を飼いはじめた人が何人かいます。
それはいい影響ですね。
- みんなすごくエンジョイしているみたいで、僕も嬉しくなりました。
お子さんがいる家庭もそうだと思いますが、僕らにとっては猫がいることで生活がひとつ豊かになったことを実感しますよね。
- そうですね。もしこれから子どもを授かるようなことがあったら、てんちゃんがきっといい影響をあたえてくれると思います。
改めて、ところてんちゃんのことを愛しく感じるのはどんな時ですか?
- 帰宅した時に出迎えてくれる時もそうですし、疲れて何もできずにベッドで寝ている時にそれを察してか、静かにちょこんと隣にきて、添い寝をしてくれる時でしょうか。猫ってマイペースな生き物というイメージがあったので、そんな風に空気を読んだりすることができるんだと知って、より愛おしくなりました。
確かに観察しているところはありますよね。
- そう思います。よく見ていますよね。
てんちゃんの妹や弟は考えていますか?
- はい。今4歳なのですが、迎えるなら今かなと思っています。やはり同じエキゾチックショートヘアが、おっとりしていて気が合うのかなと。
最後に改めて伺います。恭輔さんとところてんちゃんの関係は?
- てんちゃんにとっては、僕が完全に生活の一部になっていると思います。だから僕を都合よく使ってください、という気持ちですね。てんちゃん中心の生活なんだと思うと、すべてのことが義務ではなく「責任」になります。自分のことを生活の中心に据えてしまうと、ストレスになってしまうかもしれませんが、ところてんちゃんありきで考えるとすべてが苦になりません。そういう“しもべ”みたいな関係性が心地よいですね。だから、てんちゃんも同じように感じてくれていたら嬉しいです。妻曰く、妻不在で僕と二人きりで過ごしていた時のてんちゃんは、「いつもに増して毛並みがふわふわで幸せそう」らしいですよ(笑)。