猫と暮らす男の日常を、言葉と写真で紹介する「猫と男」。
その番外編として猫にまつわる本を紹介する「BOOK GUIDE」とともに、
猫と男がより楽しく暮らすために、ぜひともこだわりたい日用品を「猫と男の必需品」として紹介するコーナーをスタートします。
写真・文:加藤孝司 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)
第1回目は、猫とのかけがえのない日常を記録する「カメラ」の話です。
この連載をご覧になってくださっている皆さんは、カメラと言われてどんなものを思い浮かべるでしょうか?
ほんのひと昔前まではカメラといえば、カメラメーカー各社が販売している「カメラ」だったのですが、近年でカメラといえばカメラ付き携帯電話「スマホ」の内蔵カメラを思い浮かべる人が多いそうです。
25年ほど前までは、カメラといえばフィルムを使って記録するフィルムカメラが一般的でした。フィルムカメラは、写真を撮ったらカメラ屋さんにフィルムだけを持っていき、それを現像して紙に焼いてもらいます。それをしてもらわなければ撮った写真は見ることもできなかったのです。
1990年代半ばにパーソナルコンピュータ(以降パソコン)が普及、撮ってすぐに写真を見ることができるデジタルカメラが一般に普及しはじめます。
デジタルカメラの利点は背面の液晶画面で撮った写真をすぐに確認できること。デジタルカメラ一台あれば、カメラ屋さんを介さずに、しかもお金と時間をかけずに自分で撮った写真を見ることができることです。それは写真好きには本当に大きな革命的な出来事でした。しかもデジタルカメラで撮った写真は「データ」なので、メモリーカードに記録され、パソコンに繋いで保存、しかも簡単な手順で無数に複製することができます。そして写真データはメールで友だちに転送することも容易です。
2000年前後にカメラ付き携帯電話が登場し、2000年代半ば以降カメラの高画質化が進み「写メ」という言葉も生まれます。2007年にアップルから大画面、高性能の写真が撮ることができる初代iPhoneが登場すると、身近な写真はスマートフォンで、という流れが一気に加速します。
iPhoneなどのスマートフォンの内蔵カメラの何がよいかといえば、液晶の大画面で映画のようなクリアな写真や動画をほぼリアルタイムで見られること。そして撮った写真をすぐにメールで転送したり、TwitterなどのSNSに投稿・シェアができることでした。
デジタルカメラでも最近ではメモリーカードをパソコンに接続することなく、Wi-Fiさえあれば手元の携帯電話やパソコンに転送し、撮った写真をすぐにSNSにシェアすることができるように進化しました。
さて少々前置きが長くなりましたが、猫と男の必需品としてのカメラについてお話をしたいと思います。
僕が猫の写真を本格的に撮りはじめたのは、我が家に猫のジャスパーがやってきた8年前からです。それまでもカメラを片手に野良猫の写真は撮ったことがあります。
猫の写真を撮る理由は人それぞれだと思いますが、僕にとっては可愛い愛猫の成長を記録することが一番の目的になります。
特に子猫時代は毎日目に見えて成長をしていくし、動きが素早いので大忙しです。
写真はスマホ、デジタルカメラを併用して撮影します。僕の場合は、スマホは主に動画撮影用、静止画はなるべく高画質で撮りたいのでカメラでと使い分けています。
写真を撮るための機材に関しては、普段使いなれているカメラで構いません。なるべくカメラのF値が明るいレンズを搭載したものがよいでしょう。なぜなら猫は動くのが早いため、ブレのない動きを止めた写真を撮るには早いシャッタースピードが必要だからです。日中明るい室内ならF値は最低でも2.8くらいあると安心でしょう。F値は少ないほどピントがあう範囲が狭くなるので、背景がボケた雰囲気のある写真を撮ることができます。デメリットはピントが合う範囲が狭いので、うまくピントを合わせないとピンぼけした写真ばかりになることです。
そのF値を補うのが「感度」です。これはフィルム時代に「100」とか「400」とか言われていたものです。最近では32000(自分比)くらいまでは当たり前に搭載しているデジタルカメラが多くなっており、この数字が高ければ高いほどシャッタースピードを早く撮影することができます。
従って、動きを止めた猫の写真を撮ることが可能になります。感度は画質にも比例し、低感度であるほど画質の肌理が細かく画質がクリアで綺麗に、高感度であるほど粗い写真になると言われています。
ですが、時にピンぼけした写真や画質が粗い写真も愛嬌や雰囲気があるので、ピントや画質にシビアにこだわる必要はないと僕は思っています。
デジタルカメラは大きくわけて2種類、レンズが交換できる一眼レフカメラ、ミラーレスカメラ、レンジファインダーカメラと、レンズ固定式を中心としたコンパクトカメラがあります。それぞれに利点があり、一般的には一台のボディでいろいろなレンズを装着でき、高画質でこだわりのある写真を撮ることができるのは前者と言えますが、最近ではコンパクトカメラでもレンズが交換できたり高画質で味のある写真を撮ることができるそうです。僕も含め、モノへのこだわりの強いことが多い方でしたら、普段使いできて愛着を持てるカメラを一台持つと精神衛生上にもよいでしょう。
参考までに、僕は普段からライカの「ライカM」というドイツ製のデジタルカメラを使用しています。以前はニコンの一眼レフカメラやシグマのコンパクトカメラも併用していましたが、デジタルカメラは現在これ一台です。レンズは35mm換算で焦点距離75mmのものを中心に、50mmのものを併用しています。ちなみに僕が使っているカメラはオートフォーカス機能がないため、動く被写体を撮るのが難しい。
ちなみに、じっとしていないことが多い猫を撮影する工夫としては、先ほどのレンズF値×シャッタースピード×感度の組み合わせに加え、三脚を併用するという方法もあります。
僕の最近のお気に入りの「猫撮影タイム」は猫が寝ている時です。寝ていれば、写真のブレを気にすることなく、じっくりとピントを合わせて写真を撮ることも容易です。ジャスパーはリビングのソファで寝ていることが多く、最近、昼間は寝ていることがほとんどなので、インスタグラムへの投稿も寝ている姿の写真がついつい多くなります。
スマホでの撮影はカメラに比べて、より身近な猫の表情を撮ることができるのが利点のように思います。いつどんなタイミングでも気軽に撮れて動画も簡単に撮ることができますし、そして何よりすぐにLINEで家族と写真や動画をシェアすることもできるのは便利です。
加えてスマートフォンの写真画質も、日に日に上がっています。最近ではアップルのiPhoneだけでなく、僕は使ったことはありませんが、写真画質がとにかくすごいと話題のAndroid端末や、僕も愛用しているカメラメーカー「ライカ」もこだわりのあるライカレンズを搭載したスマートフォンを独自に販売しており、スマートフォンで撮る写真もますます多様化しています。
猫の写真を撮る時の注意点を一つ。カメラでもスマートフォンでもフラッシュ撮影は光が直接猫の目に入ると、子猫などは特に失明などの危険があるので注意が必要と聞いたことがあります。
フラッシュ撮影をする場合は愛猫を傷つけないためにも、正面から光を当てることがないように気をつけましょう。それと可愛い表情を撮りたいがために、必要以上に猫を追い回すのはやめましょう。人間でもそうですが写真嫌いの猫になってしまいますし、なにより嫌われてしまいかねません。動物に関わらず何ごともほどほどが肝心なのは言うまでもありません。
さて、「猫と男の必需品」、あなたの愛猫とのお付き合いの参考になりましたでしょうか?
次回は同じ「カメラ」でもデジタルカメラとフィルムを使うフィルムカメラとの違いを、それぞれのカメラで撮った猫の写真を見比べながら見ていきたいと思います。