デザイナーの岩井太郎さんと共に暮らす、5歳の小麦ちゃん。
人懐こくてひたすら愛らしいという、猫暮らしについて話を伺いました。
写真・文:加藤孝司 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)
猫:小麦(5歳)。メスのキジ白。好きなおもちゃは「カシャブン」。
男:岩井太郎。デザイナー。メンズ&ウィメンズファッションレーベル「foof(フーフ)」を主宰。パートナーの岸さんとともに代田橋のギャラリー「千年」も運営する。
Instagram:@foof_tokyo
岩井さんはファッションデザイナーをされているとお聞きしました。
- はい。学校を卒業して1年パターンメーカーに務め、退社後に自分のブランドを立ち上げました。最初は「CITY」、5年前に「foof」という名前に変えて今に至ります。
小麦ちゃんは今何歳ですか?
- 2016年の7月から飼いはじめているので5歳です。出会った当時は生後6ヶ月くらいだったみたいですが、ご飯をあまり食べられていなかったのかすごく小さかったです。
小麦ちゃんとの出会いについて教えてください。
- 友人のデザイナーが川辺でカラスにいじめられている子猫を保護したのがきっかけです。彼の家には先住猫がいたのですがその子と相性が悪かったそうで、新しい飼い主を募集しているのをインスタグラムで見つけて、秒で手を挙げました。
岩井さんは猫を飼うのははじめてですか?
- いえ、実家では僕が生まれた時から猫を飼っていました。大人になるまで6匹くらいの猫と暮らしましたね。一人暮らしをはじめてからもペット可の物件に住んでいて、いつか猫を飼いたいと思い続けてきました。
小麦ちゃんはどんな性格ですか?
- ずっと猫と暮らしてきましたが、こんな猫ははじめてというくらい人懐っこい猫ですね。人が家に来ても隠れないし、なんなら人間の輪の中心に来るくらい人見知りがなくて、みんなからは「犬みたいな猫だね」と言われることもあります。結構、変わった猫だと思います。
今日もずっとそばにいてくれていますね。
- 本当に人間が好きなんだなあと思いますね。
手のかからない猫さんですね。
- はい。病気とかはしょうがないのですが、トイレもすぐに覚えてくれましたし、ご飯も好き嫌いなく、人間のご飯にも興味がないですし……本当に手がかからない猫です。
うちのジャスパーも人間には興味があるけど、人のご飯には一切興味がない猫ですね。
- そうですか。でも最近ちょっと困っていることがあって、人間の手からしか水を飲まなくなっちゃったんです。
どういうことですか?
- 前は普通にうつわから水を飲んでいたのですが、最近は水道の蛇口から流れる水で、しかも一度人間の手のひらを経由しないと飲まないんです。
可愛いけど、大変そうですね(笑)。
- はい。このままなのかなぁと思っています。
猫には「マイブーム」がある気がするので、そのうち落ち着くかも。
- 今の流行りなんでしょうかね(笑)。
ところで、小麦ちゃんの名前の由来はなんですか?
- 小麦を保護した友人が、首元が麦の匂いというかパンの匂いがするということで、「麦」と呼んでいたんです。そういうストーリーも素敵だなあと思って。麦だと少し呼びにくいので、友人にも相談して小麦という名前にしました。毛並みも毛の色も麦みたいな色をしていて、気に入っている名前です。
猫ってなんかいい匂いがして、ついつい匂いを嗅いじゃいますよね。
- 小麦はなんだか温かい匂いがします。それと不思議なのですが、この家にはもともと祖父が住んでいたのですが、小麦から祖父が飼っていた柴犬の匂いがすることがあって、すごく懐かしい思いをすることがあります。加藤さんはジャスパーくんがはじめての猫ですか?
はい。奥さんは子どもの頃から猫を飼っていましたが、僕ははじめてです。二人で可愛がっています。小麦ちゃんは奥さんにも懐いていますか?
- 僕と奥さん五分五分という感じです。小麦は結婚する前から飼っているのですが、奥さんにとってははじめての猫で、小麦が2人の空気を読んでくれるので、家の中がすごく和やかになりますね。
ほんとそうですよね。
- 寝る時も2人の間を行ったりきたりしてくれて、嫉妬しないようにバランスをとってくれています(笑)。
体重は変わらずですか?
- 成猫になってからは5kgをキープしてくれています。でも猫ヘルペスになってしまった時に、僕が薬の与え方を間違えてしまって。口内が痛いのか、ご飯が全然食べられなくなってしまったことがあったんです。その時は1kg痩せて焦りました……。
なぜそうなっちゃったのですか?
- 錠剤をどうしても飲んでくれないから半分に割って与えたのですが、錠剤の断面が口腔内の部分に当たってそこから炎症を起こしてしまったみたいで……。その時は小麦に本当に悪いことをしました。
それは可愛そうでしたね。ヘルペスとは人間のものと同じような感じなんでしょうか。
- 人間のヘルペスとは違うようで、「猫風邪」とも呼ばれているみたいです。小麦はくしゃみや鼻水が出たりしました。それと季節性があるようで、季節の変わり目に症状が顕著に出ることもあるようです。完全には治らないみたいで、薬で抑えています。
そうなんですね。ご飯は何を与えていますか?
- 基本は「カナガン」というメーカーのカリカリです。それと、一日に1回しかご飯をあげていません。
1回ですか?
- はい。一度に一日分をあげると、自分でペース配分を考えながら食べるんです。
それは珍しいかもしれませんね。今日は岩井さんのアトリエにお邪魔していますが、猫と暮らす上で、ファッションデザイナーであるがゆえの注意点というか、気をつけていることはありますか?
- 一度針山に刺していたまち針を全部引き出していたことがあって、その時は本当に背筋が凍るくらいの思いをしました。それからは、作業場には小麦を絶対に入れないようにしています。アロマとかもそうですが、小麦の行動範囲に誤飲したら危険なものは置かないように気をつけています。
他に何か気をつけていることはありますか?
- 食事や健康面を普段から気にかけるのは当然ですが、強いて言えば、小麦のペースに合わせることでしょうか。
家の中でお気に入りの場所はどこですか?
- 日中は日が当たる庭に面した出窓に座ったり寝そべったりして外を見ています。それとキャットタワーの上と僕のPCカバーもお気に入りのようで、デスクワークをしている時はその上に居たりしますね。一日のリズムもほぼ人間と一緒で、夜中の運動会もほとんどないです。ジャスパーくんはどうですか?
朝はジャスパーが起こしてくれるので、規則正しい生活になりました。岩井さんはどんな時にしみじみと可愛いと思いますか?
- 一緒に寝ている時、かすかに寝息が聞こえた時ですね。当たり前のことなのですが、心臓が動いていたり、小さな息をしているのを感じた時に、こんなに小さいのにけなげに生きているんだなとものすごく愛おしく感じます。一緒にいられるだけで幸せを感じます。
本当にそうですね。
- いや~、本当にそうなんですよ。
僕も寝ているジャスパーの耳元で、ずーっと元気で一緒にいようねと囁いてしまいます。
- ジャスパーくんもきっとそう思ってくれていると思いますよ。
小麦ちゃんには、どんな風にいてほしいですか?
- 小麦は運動オンチで健康のために運動は意識的にさせてはいるのですが、ずっと健康で穏やかに過ごして欲しい、それだけですね。猫って何をするにしてもそこにちゃん意思がある気がして、そこがいいところだと思っています。だから小麦には自分勝手でいてほしいです。