写真・文:加藤孝司 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)
「猫はこたつで丸くなる」と昔から童謡で唄われているように、猫たちにとって寒さが厳しい季節の到来ですね。
先日訪れた道東のとある温泉街には、一年を通して猫がたくさんいます。真冬の寒さの中、温泉の熱でほんのり温まったマンホールの上で暖を取る姿にほっこりするとともに、なんだかじんときてしまいました。
今回の「猫と男」は、この一年に出会った猫と男を振り返っていこうと思います。年の瀬の団欒のお供にしていただければ幸いです。
今年は昨年に続いて世界中でコロナ禍の真っ只中。この冬は、日本国内では状況が比較的落ち着いているものの、相変わらず世界中で猛威をふるっています。
そんな中、2021年も何組かの猫と男に出会うことができました。記事では飼い主さんとの対話をお届けしていますが、今回は出会った猫たちとの裏話をお伝えしたいと思います。
今年の1月は、「あめ」と「ゆき」でした。
取材当時1歳だった二匹は、飼い主さんがペット可のお住まいへの引っ越しをするタイミングで、里親募集でお迎えされました。
デザイナーをしている飼い主さんのお部屋の本棚には、本がたくさん並んでいました。
取材中は、まだ幼く人馴れしていないからか、臆病で慎重派のあめはどこかに隠れていました。普段から活発な性格だというゆきも、本棚の上で固まっていて……。
あめはほとんど顔を見せてくれませんでしたが、最後に少しだけ見せてくれた瞬間に写真をパチリ。
とにかく愛らしい二匹の姉妹は、穏やかなご主人に心から愛されているんだなあと思いました。
3月号に登場していただいた「あお」は、以前からの友人である滝沢時雄さんちの体の大きな雄猫です。普段からその可愛らしい姿をインスタグラムで拝見していたので、実際に対面した時には感動しました。
実は滝沢さんからは、あおを迎える前から猫と暮らすことについて相談をもらっていました。どこで猫と出会えるのか、どんなものを事前に用意したらいいのか、メールで色々とやりとりをしていました。
そんな中、「ご近所さんから猫を保護したと連絡をもらい、迎えることになった」と聞いた時は、自分ごとのように嬉しかったことを思い出します。
滝沢さんの猫愛(あお愛?)の凄さはとにかく極まっていて、自身の趣味である山と猫をミックスした「山と猫」というブランドを立ち上げてしまったほど。
彼が言うには山好きには猫好きが多いとのこと。面白いですね。
ブランド設立から一年近く経ち、最近ではアイテムも増えてきていて、すごいなあ~と関心しています。
「山と猫」については、来年、この「猫と男」でもお話を聞いてみたいと思っています。
若い友人のフォトグラファー、トヤマタクロウくんの家の「たん」にも話を聞きにいきました。
たんには2020年の11月にも会いに行っていて、その時はまだ4ヶ月の子猫でした。小さくて、部屋中を好奇心いっぱいに走り回っている姿が印象的でした。
その6ヶ月後に伺った時には、避妊手術を終え少し落ち着いた姿に。
トヤマくんに聞くと、以前から甘えん坊でしたが、手術を終えさらに甘え度が増したとか。「一緒にベッドで寝るようになりました」と嬉しそう。
猫と男の暮らしには日々多くの喜びがありますが、誰かの家の猫事情を聞くのは、こちらも嬉しくなってしまうほどとても楽しいものです。
最近出版されたトヤマくんの最新写真集『DEVENIR』でも、愛らしいたんの姿を確認することができるので、ぜひご覧になってみてください。
6月には僕の地元の友達、古谷さんちのテトに会いに行きました。
テトとは何度も会っているのですが、ものすごく人懐っこい猫で、いつ行っても僕の前に現れてくれて写真も撮り放題。
この日も格別に愛らしい姿を写真に収めさせてくれました。
猫の撮影をする時に個人的に心がけているのは、とにかく無理強いをしないこと。自分も猫と暮らしているので分かっているのですが、猫との関係性においてはこちらの我を出すと必ず嫌われます(笑)。それと、伺う家は猫の家であると同時に大切なテリトリーです。撮影のために飼い主さんに抱っこをお願いすることもありますが、いつも「よかったら少し撮らせてね」という気持ちを忘れないようにしています。
テトはおトイレ中も撮影させてくれました。ありがとう。
9月には「猫と男」初となる海外で暮らす猫と男の話を聞きました。
ニーチェとカフカは、中国は上海で暮らす3歳の猫。
最初に友人からニーチェを譲り受け、そのあとすぐにニーチェの兄弟としてカフカを保護団体から迎えたそう。
飼い主の増井辰一郎さんによると、中国でも日本と同様最近では猫を飼う人が増えているのだとか。保護活動も盛んで猫や犬との優しい出会いの場も多くあるそうです。
増井さんのインスタグラムでは最近新居に引っ越して元気に過ごしているニーチェとカフカに出会うことが出来ます。ぜひ見てみてくださいね。
子猫のように愛らしい小麦と出会ったのは、この秋に知人が開催していた写真展でのこと。
ファッションデザイナーであり、代田橋のギャラリー「千年」も営む岩井太郎さんちの猫です。
僕が出会う猫と暮らす男は全員そうなのですが、岩井さんの“小麦愛”も、ものすごいものがありました。
与えるご飯から日々のケアまで、すべてが小麦愛にもとづいていて、僕もジャスパーとの関係に大いに影響を受けました。
岩井さんは、自身のファッションレーベル「foof」で小麦をモチーフしたクールなTシャツなどもつくってしまったそうです。
さて、今年の「猫と男」を振り返ってきましたがいかがだったでしょうか。
昨今のコロナ禍において、家で過ごす時間が増えていることと思います。先が見えにくい時代において、家時間は必ずしも心が休まるものではありません。
でも、そんなことお構いなしで家の中で奔放に暮らす猫を見ていると、心が穏やかになるのを感じます。そして、家で楽しい時間を過ごすことは、猫が最も得意とするところ。どんな時でも猫たちの声に耳を傾けてみるべきなのではないかと個人的には思っています。
来年も猫と男との出会いを楽しみに、皆さまも良い年をお迎えください。