何につけても偏愛体質を持つ人が多いといわれる男にとって、とりわけ一度ハマると深い愛情とともに抜け出すことが出来ないのが、猫との暮らしではないでしょうか。この連載では、そんな深い沼のような猫と男の暮らしをちょっとだけのぞいてみたいと思います。第1回目は、本連載のライター兼フォトグラファーによる、自作自演の猫暮らしをお届けします。
写真・文:加藤孝司
猫:ジャスパー ブリティッシュショートヘアの男の子 6歳。好きなものはとりささみ。
男:加藤孝司 ジャーナリスト/フォトグラファー。趣味は散歩と写真と自転車。休みの日は家で愛猫ジャスパーと過ごすことを楽しみとしている。
男たるもの猫にうつつを抜かしてはならない。
猫のジャスパーに出会うまで、猫を飼うことに対して、僕はそんなふうに思っていた。飼い猫の名前を文字通り猫撫で声で呼んだり、キャットフードやおやつの銘柄にこだわったり、InstagramなどSNSに猫の写真をポストしたり、猫と一緒に旅に出たり。
でもジャスパーと出会ってまだやっていないのは、最後の旅に出るくらいで、ほかはすべてにおいて、自分のポリシーみたいなものも含めて軽々と破られているんじゃないだろうか。
まだ外が暗い早朝からのご飯おねだり攻撃に辟易しながらも、大好きなご飯をほかの飼い主さんより多くあげたり、ねだられれば、ねだられるままにご飯をあげるのは当たり前。家の中の散歩に付き合ったり、ご飯の嗜好や偏食に右往左往し、しょうがないなあと、思いながらネットサーベイをし、美味しそうなキャットフードやオヤツをいろいろAmazonでポチったり。
結局一度もまともに入ってくれなかったイギリス製の高級猫ベッドは、今もクローゼットの奥に眠ったままだ。
「猫と男」は、そんな猫のジャスパーにやられっぱなしの僕が、猫と一緒に暮らしている男たちを、その出会いや現在の暮らしぶりとともに紹介する連載企画だ。
我が家の愛猫ジャスパーと暮らしはじめて、そろそろ6年が経つ。家に来た時は500グラムに満たなかったほんの小さな赤ちゃん猫だったジャスパーも、6キロという猫並み以上の大きな成猫に育った。なんだか好きな彼女のことを話しているみたいだけれど、たぶん、これから出会う男たち(と猫たち)も、そんな関係なんだろうと思う。
ところで、こんなことを書いている僕から少し離れたお気に入りの場所で、人間からのこの一方的な愛情を知ってか知らずか、ジャスパーは今日も極めてマイペースに暮らしている。こんな日々が願わくばこれからあと何十年と続くことを、僕は切に願っている。
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