今回登場するのは、ブリティッシュショートヘアの「ムク」4歳。
どっしりしていて、可愛くて、どこかシュールな面白さを兼ね備えた男の子です。
文・写真:加藤孝司 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)
猫:ムク(4歳)。オスのブリティッシュショートヘア。好きなおもちゃは、榎さん手製のぬいぐるみ。
男:榎悠太。グラフィックデザイナー。
Instagram:@enokiyuta
ムクくんとの出会いを教えてください。
- ブリティッシュショートヘアの猫を探していた時に、ペットショップで出会いました。実はムクちゃんの前にも猫を飼っていて、その子は野良猫を保護している団体から譲り受けた猫だったのですが、元は外暮らしの猫だったからかすごく外に出たがる子で、ある日自分で網戸を開けて脱走してしまいました。かなり探したのですが結局見つけることができず、自分の不注意でもあったこともあり、すごく落ち込みました。その出来事をきっかけに、外で暮らしたいと思っている猫を人間のエゴで家に閉じ込めるのはかわいそう……というマインドになってしまったんです。
辛い体験をされたんですね。
- それで、次に飼うならブリーダーさんかペットショップでのご縁で、と思っていた時にムクちゃんと出会いました。
「ムクちゃん」と呼んでいるんですね。一目惚れだった、ということでしょうか?
- はい。ペットショップにいた時も一匹だけものすごくご飯を食べるのが早かったり、仕草や顔つきも可愛いというよりも、面白いなあと思って一目惚れでした。家に連れて帰ってからも、いつも笑わせてもらっています。
ちなみに、どんなところが面白いですか?
- 多分ムクちゃんはギャグセンスが高くって(笑)。人間の食べ物には興味がありませんが、たまたまいつものご飯を切らしてしまって、間に合わせでコンビニで買ってきたご飯を「ごめんね」と言いながらあげても、気にせずバクバク食べてくれます。どんなオモチャを買っても絶対に遊んでくれるし、お届けもののダンボールにも真っ先に入ります。目新しいものにはすぐに乗るし、「何やってるの?」という感じでいつも笑わせてくれる。一緒に暮らしていると面白くって大好きです。
ウチのジャスパーもムクちゃんと同じブリティッシュですが、似ているようでどこか正反対です。やはり性格の違いはあるんですね。
- ブリティッシュショートヘアって“抱っこ嫌い”だと言われますよね。うちのムクちゃんも抱っこは苦手です。寝る時も頭の近くで一緒に寝てくれるというよりは、僕の足にちょっとだけ触れて、しかも僕の方とは反対向きに寝ています。べったり甘えてはこないけど、一定の距離をもちながら、絶対に傍にいたがるという絶妙な甘え方をしてきて、いつも笑わせてもらっています。
膝の上でなでなでするのに憧れますよね。
- わかります。めちゃ憧れます。1年に一度くらい、僕がソファで膝を立てて寝ている時に膝の下に入りたがる時があって、それがMAXの甘え方ですね。
ジャスパーも寒い季節には、腰と膝と踵のピラミッドのような三角ゾーンに入ってくれることがありますよ。我が家ではそのような状態を「ジャスピラ」と呼んでいます(笑)。
- やはりそこなんですね。ブリティッシュならではの甘え方の距離感なんですかね、やっぱり面白いなあ。
ムクちゃんとの関係を言葉で表すとしたらどんな感じですか?
- 可愛い我が子というよりは、“おもろい相棒”という感じで接していますね。向こうもそれをなんとなくわかっているみたいで、同じ屋根の下で各々自由に暮らしている感じです。
ムクちゃんは今年の9月で5歳になるそうですが、成長して何か変わったところはありますか?
- 性格的には小さな頃から面白いし、変わったところはあまりないですね。話は変わりますが、ムクちゃんは小さな頃に人間のトイレで用を足す訓練をしたことがありました。
それはなぜですか?
- 海外では、ペットに人間用のトイレでおトイレをさせることってよくあるそうです。
たまにネットで見かけます。自然とするようになるんですか?
- 人間用の便座にセットする猫用のトレーニング用便座シートがあるんです。そこに最初は猫砂を敷いて、猫用トイレと同じ感じではじめます。それに慣れたら猫砂をなくして、穴を徐々に広げていって……最後にトレーニング用のシートを外す、という流れですね。
へー、そんなものがあるのですね。それでムクちゃんは出来るようになったんですか?
- はい、出来るようになりました。それでそろそろ去勢のタイミングだから手術をしようと調べてもらったら、たまにあるケースなのだそうですが、睾丸がまだひとつ降りてきていないので2つ揃うまで少し待ちましょう、とお医者さんに言われました。そうしたら、待っているうちにマーキングがはじまってしまって。
そうでしたか。
- 去勢を終えたらマーキングは止んだのですが、それからは猫用のトイレでしかしてくれなくなりました。
あら。でもそれはそれでよかったですね。でも、子猫の成長って早いですよね。
- ほんと、一週間単位で成長しますよね。ムクちゃんの子猫時代の写真をもっと撮っておけば良かったと少し後悔しています。
ジャスパーも3ヶ月でお迎えして、半年後には子猫時代を知っている友人にはラスボス感があると言われました。
- あはは。ブリティッシュは大きくなるとガッチリ体型になるからなおさらですよね。ジャスパーちゃんは体重は何キロですか?
成猫になってからはずーっと6キロ前後です。
- ムクちゃんと同じくらいですね。雑種の猫を飼っている友人には「デカ!」と驚かれますね。小さな頃から手の平が大きくて、そこも可愛いんですよね。
ご飯はどのようにしてあげていますか?
- 自動給餌器であげています。
それは留守にすることが多いからですか?
- 僕の仕事が不規則で、ご飯をあげる時間がマチマチになってしまうのがよくないなあと思ったからです。それと一時期すごく太ってしまったことがあって、体重管理をしたほうがいいと思い自動給餌器を導入しました。でも、それまであげていたカリカリの粒だと大きすぎて給餌器から出てこなくって。
あら。
- それで違うご飯にしました。ご飯に関しては今、猫専門のご飯のD to Cサービスの立ち上げを計画している獣医師免許を持った友人がいて、その人と一緒に猫のご飯の開発しています。僕はその製品周りのデザインをしていて、それもあって猫のご飯について色々と調べているところです。
それはどのようなものですか?
- 猫専用のフレッシュフードの開発です。カリカリのドライフードって、水分も全然取れないし、保存保管のしやすさがメリットではありますが実はかなり人間ファーストなんです。その点、フレッシュフードは保管のしやすさは劣りますが、キャットファーストなんですね。犬用は色々と開発されているのですが、猫用はまだあまりありません。
そうなのですね。
- それが完成したら、ムクちゃんにも食べてもらいたいなあと思っているところです。これまでもご飯は自分で調べて、猫の健康に悪いものはあげないようにはしてきましたが、猫用のご飯って現状正解がないような気がしていて。
ご飯については毎日の栄養と健康、そして何よりも猫たちの楽しみだから考えちゃいますよね。
- 現状、もちろん全てが悪いわけではないけど、どんなクオリティのお肉が使われているのかわからないということがあったり、猫は本来肉食動物なのでタンパク質を多く必要としているのですが、原料を安く抑えるために、野生の状態だと猫が口にしないような穀物を加えて炭水化物の比率を多くしているドライフードも多いらしいんです。
そうらしいですね。
- 犬と猫では違うし、ペットではなく猫に特化した開発をしている最中です。 猫って無邪気さとシュールさが同居しているというか、ただ可愛いだけじゃなくて「なんでそんなポーズをしているの?」と思わず笑ってしまう時ってありませんか? そんな猫独特の“面白い感じ”が好きだから、ブランドメッセージとしてもユニークネスがあるものにしようと考えています。このプロジェクトを進めていくにあたり、ムクちゃんとの暮らしがものすごく参考になっています。
それは楽しみです! 猫と人間の独特の距離感というか、榎さんがおっしゃる楽しさ、ユニークさってすごく分かります。
- 本当はもっと甘えてもいいんだよ、と思うこともありますけど、猫様にそんなことは求めるものじゃないと思っています(笑)。
ムクちゃんを一番愛おしく感じるのはどんな時ですか?
- ヘソ天をしている時には、「もう、何やってるの?」という感じでニコニコしてしまいます。あとは僕がベッドに入って少しすると必ずやって来て、布団をふみふみして満足したら去っていくのですが、その時は「ずっとここに居ていいんだよ」と愛おしくなり、ムクちゃんと一緒の生活に幸せを感じますね。