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猫と男 東京で生きる男と、共に暮らす猫。ふたりの距離感から垣間見える、唯一無二の物語。

猫にまつわる美しい雑誌

写真・文:加藤孝司 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

『CAT PEOPLE キャット・ピープル』 はオーストラリアのジェシカ・ロウさんとギャビン・グリーンさんにより、 猫と飼い主たちをフィーチャーした年間誌として2013年に創刊した雑誌。
表紙をめくると目次に続き、 日本語の文字が目に飛び込んでくる。 そう、 この雑誌は英語と日本語のバイリンガル表記となった洋雑誌なのだ。

キャット・ピープル

誌面には、 猫と暮らす人たちが代わる代わる登場する。 ファッションブランド 「ヴィベッタ」 を主宰するデザイナーのヴィベッタ・ポンティさんと5匹の猫、 イラストレーターのマット・メイランドさんとオシキャットの愛猫・クインシー、 ロンドンからはファッションブランド 「クレメンツ リベイロ」 のスザンヌ・クレメンツさんとイナシオ・リベイロさんのデザイナーデュオのブリティッシュブルーの二匹の猫、 アーティストのタニヤ・シュルツさんと愛猫・ドティー。
登場する人物だけでなく、 インタビュアーも猫と暮らしている人が選ばれているのもなんかいい感じだ。

キャット・ピープル

これらの猫と暮らすクリエイターに共通するのは、 彼らのクリエーションに必ずといっていいほど猫が登場すること。 インスタグラムに頻繁に登場するのはもちろん、 たとえばデザインする服の柄に猫が取り入れられランウェイを飾る世界的なコレクションになったり、 アートワークになったり。
もちろん、 イヌ派のクリエイターの作品に愛犬がモチーフになることもあるから、 ネコ派ならではの特別なことではないかもしれないけど、 自身にその性格を投影しがちなのはこの雑誌を見るまでもなく猫派のほうであると言えるかもしれない。
作家と猫たちの関係については以前にも書いたが、 猫がクリエイターの創造力を刺激するのは時代も場所も関係がないようだ。

キャット・ピープル

キャット・ピープルたちのインタビューに加え、 猫をモチーフとしたアーティストによるアートワークがページに美しく挿入されるのも、 猫をきっかけにしたアート雑誌らしい立てつけだ。
収められているのはオリンピア・サニョーリさんのイラストレーション、 ホンマタカシさんの写真、 ルーシー・ジェイムズさんのコラージュ作品。 「シドニー現代美術館」 のシニア・キュレーターであるグレン・バークレーさんのアートのモチーフになった猫の考察も興味深い。

表紙の写真は 『OIL MAGAZINE』 の連載 「TOKYO AND ME」 でもおなじみの、 日本を代表する写真家の一人であるホンマタカシさんによるもの。
ジェシカとギャビンはこの雑誌にホンマさんが登場している理由をその序文の中で、 「私たちのヒーローであるから」 と書いている。 (そのホンマさんも猫と暮らしている……)。

アンディ・ウォーホルの猫

もちろん、 この本の出版人であるエディターのジェシカとフォトグラファーのギャビンも二匹のシャム猫と暮らしているというキャットピープルだ。

創刊時には年間誌として構想されたようだが、 その後のキャット・ピープルマガジンはどうだろうか? この第一号以降、 新たな号が出版されたという話は聞かない。

ジェシカとギャビンの二人がつくったキャット・ピープルマガジンだが、 これほどまでにセンスよく猫にまつわるあれこれをまとめた雑誌を僕は知らない。
美しい写真に、 美しいグラフィック、 落ち着いたベージュ色の表紙に英語とカタカナのタイトル文字と写真のレイアウトも絶妙なバランスで、 日本の動物をモチーフとした雑誌には見られない美しさだ。 ソフトカバーの雑誌でありながら、 表紙も中の紙も、 ページをめくるたびに紙の感触が手に残るような、 味わいのある厚紙が使われているのも感じがいい。

僕はこの本を手に入れて以降、 本棚からたびたび引っ張り出しては、 ぱらぱらとページをめくっている。
ある日、 ふいに僕らの目の前にその後のキャットピープルが現れることを、 今もひそかに期待しながら待っている。

アンディ・ウォーホルの猫

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2022/11/29

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