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堀井和子さんの「いいもの」のファイル

第86回:LE CAFE DU BONBON のサブレとグリッシーニ/"うめちゃんの穴あきレードル”から

文・写真:堀井和子

お菓子

 左上は、キタノカオリとキャラウェイシード入りグリッシーニ。
 左下は、キタノカオリとコーングリッツのサブレ。
 右は、そば粉とコーングリッツのサブレ。

 11月17日からの“フラットな objet 、いろいろトート” 展、会期中に LE CAFE DU BONBON の久保田さんが、焼菓子を作ってくださることに。

 連載第84回の夏のフロマージュ、モンドールと一緒に送ってくださったのが、そば粉とコーングリッツのサブレでした。

 口へ運んでほろっと崩れる瞬間に、そば粉とコーングリッツの香りと歯触りが弾けるようで、塩味と後にくる粉の甘さのバランスが絶妙です。

 パンを焼く時に使ったことがある、キタノカオリの香りとコーングリッツも合う気がして、ふと久保田さんとおしゃべりしたことが、もう1種類のサブレにつながって、9月末に試食させていただきました。

 キタノカオリとコーングリッツのサブレは、さらに軽やかでサクサクと崩れる食感ながら、しっかりと、小麦の風味が記憶に残ります。

 そば粉とキタノカオリの粉の奥行きや違いを味わい分けるのは、なんて贅沢なこと、と心を動かされました。

 グリッシーニは、サブレより硬派なタイプですが、キャラウェイのきかせかたが粋で、粉の魅力が引き出されていて、ずっと食べていたいくらい美味しい。

 久保田さんは、薄力粉と強力粉、全粒粉など、ベース生地のまとまり具合を確認したそうで、今回の甘くないサブレやグリッシーニは、粉を大切に探究する焼菓子かなぁと。
 フロマージュと一緒に食べても、ワインや紅茶と合わせても……。

 (こちらの写真は試食の時のもので、企画展で販売する時のセット、パッケージは未定です)

objet

 企画展のテーマは、ジャン・アルプの冊子 ( “いいもの、みつけました!”第27回) を見ていて、いびつな形、穴あきのデザインが面白そうと、考え始めました。

 今までに撮った画像をチェックして、面白そうなモチーフをピックアップしたのですが、その時一番魅力的に思えたのが、うめちゃんの穴あきレードルでした。

 2009年7月、暗くなってから撮影したので、輪郭がぼやっとしていますが、うめちゃんがモーネの寺小屋で制作したこの作品を見た時の新鮮な刺激は、はっきり思い出せます。

 うめちゃんは年齢がずっと下ですが、アンテナや感覚がカッコいい友人です。

 今年の7月、この写真をモチーフにして objet を作ることをうめちゃんに許可してもらって、挑戦がスタートしました。

objet

 ファーストステップとして、モチーフをラフにスケッチして、こんなものが作れないかと長谷泉さんに試作してもらったのが、この objet。うめちゃんにも画像を見てもらいました。

 柄は短くして、丸い部分や穴のデザインは変化していますが、うめちゃんの穴あきレードルの DNA は受け継いでいると思います。

 ジャン・アルプの作品もそうだけれど、きちんとした円形ではない、のびやかな形、穴あきのデザインは、ワクワクする自由さがありませんか。

 何かをのせたくなったり、何かと組み合わせたくなったりするフラットな objet 、他にもいろいろ並びます。

試作

 こちらは1回目の試作品。

 サイズや隅のカーヴの具合、穴の大きさなど、この後調整して企画展に。


Profile
堀井和子 Kazuko Horii
東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」


連載 「堀井和子さんの“いいもの”のファイル」 は、 次回より CLASKA ONLINE SHOP 内の 「Web magazine」 にて展開させて頂きます。

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2023/10/24

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