文・写真:堀井和子
懐石傳書「椀盛」 辻嘉一(婦人画報社)
表紙が 18.5cm×26cm の大きい版で、1969年発行の7版を古書店で買いました。辻さんの料理、佐伯義勝さんの写真、熊谷守一さんの題字・装画はもちろん、撮影されたお椀の格調のある美しさに溜息をつき、ページを繰るうちに美術館で時を過ごしたような気持ちになります。
見開きは朱漆塗椀、瓜漆絵椀の写真と、お椀についての説明。
この本に紹介されているような漆のお椀を今、見ることができるのは日本民藝館かもしれません。日本でこんなお椀の文化があったことを誇らしく思うのと同時に、漆が取れなくなったり、木地師が少なくなったり、後継者がいなかったりで、作り続けられていないことが残念です。
2003年の暮れに盛岡の光原社で買い求めた漆塗りのお椀。
お椀に描かれているのは柏の葉で、堀井家の家紋が丸に
朱と黒の塗り分けのお椀は、もう少し前に、やはり光原社で。シンプルでモダンなデザインですが、北東北の漆の朱色・黒は、控えめながら凛とした佇まい。何年か光原社に足を運び、手仕事のものについてお話を伺ううちに漆のお椀が2客ずつ増えたこと、懐かしく思い出しました。
福の文字と
藤原盆と昔買ったコノシャンテの文字柄の皿、何をのせても特別においしく楽しく感じられるなぁと、ついつい、この組み合わせでテーブルへ。
Profile
堀井和子 Kazuko Horii
1954年東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」