文・写真:堀井和子
長さ29cm 短径23cm の楕円のガラス皿は、辻和美さんの作品。
先月、Zakka のお店の自然光が入ってくる窓際で、すーっと目に飛びこんできました。幾分長めのプロポーションで、中央は渦のようにブルーがさらに深くなっています。表は緩やかなガラスの流れが感じられますが、裏は磨いてフラットな底面と縁へ向う勾配を作ってあります。実際に FOOD を盛り付けてテーブルに置くことを考えた工夫と洗練されたダイナミックなデザインにハッとしたのです。
ガラス製品は色のあるものより透明なものを使うことが多いですが、この濃いブルーの色合いは特別で、辻さんのカッコいい造形に、何かをのせてみたくてたまらなくなりました。
この上で、ナイフを使って切り分けたくないので、色が合いそうなブリーやカマンベール、シェーブルなどのチーズは切り分けてから、いちじくや洋梨と。我家では朝食の時、エメンタールとグリュイエールチーズをスライサーで薄くスライスして食べるので、こんなふうに。
ティーカップやミルク入れの陶器の白とガラス皿の濃いブルーは、冷た過ぎない爽やかな組み合わせで、朝食の後に洗ってからしばらく並べて見ています。
季節が進んだら、樹の葉で包んだり巻いたりした柏餅やちまきなどをサーヴするのも面白そうかと。
1980年代にスウェーデンで見つけたガラスボード。
後になって Lindshammar 社の製品で、Gösta Sigvard が1968年にデザインしたことを知りました。
やわらかなカーヴが気取っていない印象で、トロッとなめらかなガラスの質感が新鮮でした。
量産されたものらしく、このボードの上ならチーズを切り分けても大丈夫そうですが、この時代の北欧のガラス製品は、使う人の心を動かす度合いがすごいです。
初夏の夕暮れ、南仏のホテルの庭奥にプールがあって、緑の樹木を背景に、シンプルな白い寝椅子が並んでいました。
まだ水温が低いのでオフシーズンですが、日光を浴びて寛ぎたい宿泊客のための設えでしょうか。
写真を見ていると、旅行の時には気づけなかった外国のホテルの庭の魅力にドキドキし始めます。いろいろな種類の花ではなく、自然に枝を広げた樹や低木の緑、太陽の光や風を感じながら過ごす贅沢な時間が、しっかり記憶に刻まれているのが嬉しいです。
Profile
堀井和子 Kazuko Horii
1954年東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」