文・写真:堀井和子
プロヴァンスの初夏、光の中で見た岩盤に野草。
茎や葉の線、花や実、乾いた花殻の点を目で追っていると、そのままテキスタイルのデザインになってしまいそうな構成に感じられます。
自然に植物が群生しているところ、野原っていいですね。
家を取り壊して売地になっている土地に、エノコログサやクサイチゴがいつのまにか元気に数を増やしていると、散歩のコースにそこを加えるようになります。子供の頃育った狛江は、畑や雑木林、野原が家のまわりにたくさんあって、日が暮れるまで遊んでいたので、空地や野原が少なくなった今、馴染の野草に出合うと懐かしくて嬉しくて。
サンフランシスコ郊外のバークレーの街で見つけた pin。(アメリカではブローチのことを pin と呼んでいました)
極く薄い銀の板で作られていて、その尖った長い尾の形状は、実際にセーターやカットソーに付ける時、動く時、慎重にしなくてはいけません。
細かい線と点で表現された爬虫類は、ちょっとリアルで剽軽、トカゲやヤモリ、サンショウウオの仲間でしょうか。ネットで検索していたら、淡い緑色のとても美しい、イグアナの仲間の小笠原の“アノール”の写真を発見。いろいろな体型の爬虫類がいるなぁと、それぞれの銀色の pin が並んでいる様子を想像してしまいました。
買ったのは30代初め、取り出すたびに何だかニヤッと笑える pin で、ずっと大事にしています。
スウェーデンの Lindshammar の、ボタンの形のガラス製品。
指先がじかに触れないように、先端が尖った2つのボタンをチーズの両側にさし込んで使う道具。表面には CHEESE FROMAGE OST と文字が刻まれています。黄色い穴開きのチーズの断面をプリントしたパッケージがとてもかわいい。
3.5cm × 7.5cm × 3cm の小さいサイズながら、おいしそうなインパクトにハッとします。
5月、イイギリの雄花が地面にパラパラッと落ちているあたりを通ると、すごく爽やかな、いい香りに気づきます。
毎年、いい香りが漂う2週間があって、この香りを発している植物は何か、探していたのですが、3年ほど前にやっとイイギリの花だとわかりました。
イイギリの黄緑の花は、雄花も雌花も小さく、大きな葉に隠れるように咲くので目立ちませんが、私が知っている一番好きな香りだと思っています。
植物図鑑を調べても“香気がある”と記されているものは少なかったので、知らない方も多いかと。パラパラッと落ちていたら、ぜひ香りを探してみてください。
Profile
堀井和子 Kazuko Horii
1954年東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」