文・写真:堀井和子
建築家 吉阪隆正さんの「住居学」(相模書店)は、神保町の古書店で購入した本です。
表紙カバー表面は家の間取り図に、おかって、いす、ろうかなどの文字、裏面は公園の配置図で、ぶらんこ、しいそう、じゃんぐるじむなどの文字が記されています。平仮名が、大人が書いたような慣れた字の印象で、おや、と思いましたが、中のページに“六帖の板の間に白墨で子供達はこんな画を描いて、中で生活をあそんでいた”と紹介されていて納得しました。吉阪さんが、その様子をスケッチしていたんですね。
のびのびしたスケッチの線と文字、オレンジ色がかった明るい赤のタイトルと著書名の表紙カバーが大好きな一冊。
その後「素顔の大建築家たち」(建築資料研究社)の本で、弟子である鈴木恂さんの吉阪さんについての講演を読みました。
1917年2月13日に東京・小石川で生まれ、早稲田大学建築学科卒業、1950年から2年間ル・コルビュジエのアトリエに勤め、マルセイユのユニテの現場監理をして帰国。1954年に早稲田大学に吉阪研究所を創設。
飛ぶがごとく歩いたり、世界を回って、そこの人たちの生活や行動を観察したり、共同設計体制で遠隔操作のスタイル —— 鈴木恂さんのお話でそれらが生き生きと伝わってきて、当時の吉阪研究所で、活動されている様子を実際に見ることができたらと思ってしまいました。
大きな文字が周囲に深く刻まれた、フランスのジャム用ガラス器。厚手でしっかり重さもあります。こんなふうに全体に文字を配するガラス器は、金型を作って大量生産しないと叶わないデザインです。今までに作りたいと考えて、幾度も諦めましたっけ。
ノルマンディ地方のルーアンの文字が刻まれているので、もしかしたらりんごの加工品用かもしれませんね。
散歩の途中で見つけたお店のウィンドー。(2016年に撮影しました)
限られた細長いスペースに都市名を並べたレイアウト、チョコレートみたいなのにクールな文字の茶色、妙に魅かれたのを覚えています。
Profile
堀井和子 Kazuko Horii
1954年東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」