文・写真:堀井和子
GALLERY CLASKA で2月に開かれた松林誠さんの"FRUITS"展、文旦の絵を買いました。
60cm×73cmの大きなドローイングの作品です。
背景の銀色がしっかり塗られていて、文旦は画面いっぱいの、のびやかな形に描かれています。文旦の黄色がとてもおいしそうで、手描きの文字は元気が湧いてくる飄々とした力を持っている気がしました。
毎年2月から3月にかけて、Kさんが贈ってくれる文旦の箱を置いたあたりは、清々しい極上の香りが漂っています。文旦のマーマレードを煮る前、薄く刻んだ果皮と果実をほうろうの鍋に入れて、ひたひたの水とグラニュー糖を加え、3〜4時間置くのですが、散歩から戻ってドアを開けると、その鮮烈な文旦の香りに圧倒されます。
ドローイングの大きい作品は、なかなか選べない気がしますが、2009年、今のマンションに引っ越す3カ月前、松林さんの個展でグレーに白い花の絵を選んで、玄関の左側の壁に掛けました。90cm×117cmの大作ですが、個展で見た時、主人も私もこの1枚を迷わず決めたことを思い出しました。(いいもの、みつけました」第74回に絵の端の部分が写っています)
銀色、文旦、手描きの文字、どれも大好きなので、今回もすっと迷わずに。
キッチンの手前の壁に掛けたので、料理する前に文旦の絵を見ると、爽やかな
松林さんの文旦の黄色で思い浮かんだのが、 Calder の本と、昔展覧会で購入したイイノナホさんのガラスのオブジェ。
直径14.5cm、厚さ3cm。目玉焼を作る時に割った卵みたいな、おいしそうな存在感が印象に残ります。卵の黄身みたいな色を、こんなふうにガラスの中に閉じ込める発想にハッとしませんか。
先日、散歩の途中で展示を知り、ふと立ち寄って買い求めたリトアニア製のリネンのキッチンクロス。TEMBEA のディレクションの GOOD LINEN SUPPLY のアイテムです。
文旦の絵が我家に来たので、ついつい黄色も選んでしまいました。
白いテーブルの上にパントーンペーパーを敷いて撮影したのですが、踏み台代わりのスツールも写っているカットが面白かったのでこちらを。
Profile
堀井和子 Kazuko Horii
1954年東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」