文・写真:堀井和子
星耕硝子の伊藤嘉輝さんの個展で、ガラス器を買いました。
こちらは口径21cm、高さ7cmのガラス鉢。淡い蜂蜜色がかった工芸ガラスの色が縁に見えて、ガラスなのに温かさを感じるくらいの厚みがあります。
両手で持った時、器の重みが心強く、親近感を抱くように思えました。私は、ガラスの流れが見えるようなガラス器に、なぜか魅かれてしまいます。
家で作る料理や盛り付けかたとの相性も、あるのかもしれませんが。
おっとりした何気ないフォルムに見えますが、底から口径へ向かう傾斜の具合が絶妙で、料理を盛り付けた時に、威力を発揮するタイプかなぁと。
茹でたじゃがいもと新玉葱のスライスをヴィネグレットとマヨネーズで和えたシンプルなポテトサラダを、まず一番最初に、このガラス器でサーヴしてみたくなりました。
口径11.5cm、底の径7.5cm、高さ3.5cmの濃いブルーの器は、側面にモールが少ない2個を選びました。
底の部分は自然な厚みがあって、濃いブルーの色をさらに深くしています。伊藤さんのこの濃いブルーは見入っていると引き込まれて、時間が別の流れかたをし始めるくらい美しい。
画像で、この色とフォルムをぴしっとお伝えできないのが残念です。
個展では、他に、透明で縁だけ濃いブルーの平皿や、蓋付きの瓶タイプ、周囲がえんじのスカラップのような浅い鉢など、真夏に胡麻豆腐や山桃のコンポート、フワッとしたかき氷を盛ってみたくなる器が、たくさん並んでいました。
2016年、 LTshop で見つけた棒キャンデー。
LTshopは 、リトアニアのデザインプロダクトとクラフトを扱うセレクトショップで、オーナーの松田さんが集めるアイテムは新鮮な刺激に溢れています。
キャンデーは食べるのは好きではないのですが、思わず2〜3種買ってしまいました。
淡い琥珀色にチョコレートかコーヒー色のドット、角が丸い、長閑な四角に幾分長めで北欧っぽい形の白木のヘラ。いいなぁ、素敵だなぁ、ずっと見ていたいなぁ、と思った後、こんな薄いガラスの Objet が作れたらなぁと想像がふくらみました。
2010年、パリのポンピドゥーセンターで見たアルミニウムのチェア。
ポールケアホルムが、1953年に大量生産を可能にするため、アルミニウムを使ってデザインしたシェルというモデルで、当時大量生産には結びつかなかった、幻の作品。
座り心地はよくなさそうですが、座面と背もたれが一体となって、ヘリを返したような面白いフォルムと、アルミニウムの銀色にワクワクします。
食べないキャンデーや座らないチェアに魅力を感じ続けているのが不思議です。
Profile
堀井和子 Kazuko Horii
東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」