文・写真:堀井和子
和久傳のれんこん菓子 西湖は、蓮根からとれる蓮粉と和三盆糖蜜を練り上げ、二枚の笹の葉で包んだ贅沢な食後の甘味で、味わったことがありましたが、この蓮もちのことは、姪に贈ってもらって、今年初めて知りました。
蓮もちを冷やさずに味わうと、優雅な弾力と、染み渡るような澄んだ甘さにハッとします。蓮もちのシンプルで力強い美味しさが衝撃的でした。
西湖は、笹の葉から細長い円錐状の中身が現れるとドキドキしますし、爽やかな笹の葉の香りにも気を取られるせいか、本来の風味をしっかり確かめられないでいたのかと思ったくらいです。
わらびもちや葛もちとは違う蓮粉の滋味を、はっきり捉えられた気がしました。
少し冷やしても、温めても美味しいそうですが、私は常温での味わいをひときわ印象深く感じます。
蓮もちは、かなり日持ちするので、以来、我家では買い置くようになりました。
星耕硝子さんのガラス皿をアクリルのトレーに。
南沢奈津子さんの銀色のトレー(連載第32回)にのせると、蓮もちの透き通った 深い色が、さらにドラマティックに秋めいて目に映ります。
初夏の或る日、千駄谷小学校の校庭にクレーン車が入って、道路際の高く伸びた樹木の上部を、バサバサとカットする作業が始まりました。
剪定などとは別の、乱暴と言ってもいいくらいの切りかたで、心配になったのです。
枝を切る場合、気をつけないと樹木そのものを枯らしてしまうことがあって、以前、何本かそういう樹木を見ていましたので。
千駄谷小学校の樹木は年月を経て大きく育ち、枝を伸ばし、今年の春先の新緑の頃も、見上げると元気が湧いてくるようで素敵でした。
根の先に問題があって枯れた樹木は、なるべく早く伐採しなくてはいけないことは知っていますが、道路に面した樹のほとんどを、上1/4か1/5切っていたので、校舎の工事の準備だろうかと考えていました。
夏休みに入って工事が進み、校庭のコンクリート面が緑の芝生に変わりました。2学期が始まるまで、芝が根付いて青々と育つように、立ち入り禁止の設定です。
大きな校舎の工事ではなさそうです。
子供達がこの芝生の上を気持ちよさそうに走り回る様子が目に浮かび、やっと、ほっとした次第です。
樹木の方も、元通り、健やかに枝を広げ葉を繁らせるといいなぁ。
今年、11月終わりからの企画展の準備をしています。
木の表情を見つめるのが面白い、カゴみたいな objet を、長谷泉さんに試作してもらっているところです。
Profile
堀井和子 Kazuko Horii
東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」