文・写真:堀井和子
昔、フランス旅行の帰りに空港で買い求めた、バター500g入りのパッケージ。
直径12cm 高さ10cm。上部に赤で CELLES s/BELLE とプリントされています。
ÉCHIRÉのバター250gのパッケージ。
白木の状態がとても綺麗で捨てることができなかったので、30年近くたってこのくらいの数に。
ポプラの材を薄く削ったものを組んで、ホッチキスで留めたデザインがカッコいい。
ポプラの材は白色で柔らかく燃えやすいため、マッチの軸木や包装用に使われるそうですが、日本ではあまり利用されないようです。
日本では、杉やヒノキ、松など天然の木材を薄く削り出した経木を、菓子や味噌、魚などの食品包装に使っていました。
「日本の伝統パッケージ」の本で紹介されている徳島県小男鹿本舗冨士屋の”
経木について調べていたら、別の呼びかたが記されていました。
へぎ(折、片木、剥) 枇木 —— 様々な木や材にまつわる日本の言葉、文字の美しさにもドキドキしました。
バターを入れた木のバケツはホッチキスで留めた簡単な造りですが、軽快で何気ないけれど美しいなぁと思って、大事にしています。
ふと、朝食限定のカフェで、自家製のパン2人分だったら直径12cmの方、1人分だったら直径10cmの方に入れてサーヴしたらなどと考えて楽しくなることも。
バターやパンには、この素直な質感がよく合います。
”霰三盆”のパッケージくらい精巧に作ったものがよいかというと、何気なさが違うように思うのです。
年月を経ても白い木の表情を保って清々しく見えますが、バターを多く配合したクロワッサンなどは入れたくなかったりで、扱いには気を使っているかもしれません。
すごく気に入った質感、フォルム、雰囲気なのに実用的ではない —— こんなふうないいものが、家にはいくつもあります。
MADELEINES DE COMMERCY のパッケージ。
直径27cm 短径13.5cm 高さ10cm
1992年に東京で買いましたが、マドレーヌの味は覚えていません。
やはりこの楕円形の木のパッケージに強く魅かれて、選んだと思います。
エシレの木のバケツよりしっかり丁寧に作られていて、ホッチキス、留金も目立たないように配慮してあります。
使われている木は幾分赤みがかった温かい色で、経年変化でさらに落ち着いたニュアンスに。
形はシェーカーボックスに似ていて、あくまでもパッケージという造りですが、私はこのマドレーヌの木箱が好きです。
シェーカーボックスは昔買って、その後手離せたけれど、エシレやマドレーヌの木のパッケージは手離せないでいます。
フランスの南西部のマルシェで、ロカマドゥールという山羊のチーズが並べられていた経木の箱。
白い木の表情と隙間のある構造が素敵です。
Profile
堀井和子 Kazuko Horii
東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」