古より、わたしたちの健やかな心と身体の成長は、常に植物の力と共にありました。
春夏秋冬、大地からのメッセージに耳を傾けながら、
自分自身の心と身体の変化に上手に向き合うためのヒントをお届けします。
文・写真:水野さと美(Sucre medicinal herbs) 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)
Profile
水野 さと美(みずの・さとみ)
岐阜県多治見市在住。「シュクレ メディシナルハーブ」主宰。ワーキングマザーとして過ごす慌しい日々を、自然の香りやハーブに癒され穏やかに乗り越えてきた経験を元に、ハーブ療法ワークショップを展開。ドイツから輸入される上質なハーブを原料に、ブレンドハーブティーも創作。
HP:www.sucre-medicinalherbs.com
Instagram:@sucre_medicinal_herbs
春は生じ、夏は長じ、秋は収め、冬は蔵する
植物が春に芽吹き、夏に花開き、秋に実をつけ、冬には実や葉を落とし、ひっそりと籠るようにして新たな芽吹きの季節に備えるのと同様に、人間にとっても秋は「実り」の時期。同時に、冬に向けて「収めていく」時期でもあります。外へと発散されていたエネルギーを内部へと収めるべく、身体は閉じていきます。
東洋医学では、人間の身体は自然の影響を強く受けていて、自然に則した過ごし方をすることで健康を維持できると考えます。秋は過ごしやすい季節ではありますが、空気の乾燥から体を守り、潤いをしっかりと保持することが来たる冬の健康への備えとなることを意識して過ごしましょう。
夏のダメージの回復
夏の間、暑さや紫外線により、身体はさまざまなダメージを受けてきました。その修復をしてくれるのが、古来より馴染み深い「もみじ」。実はハーブティーとして飲用できることをご存じでしたか?
抗糖化作用、脂肪の吸収を抑えるといったさまざまな力を秘めていることが立証されており、サプリメント原料として海外へ輸出もされている優秀なハーブなのです。豊富に含まれるポリフェノールが、身体を酸化から守り、夏に浴びた紫外線の影響を和らげてくれます。少し渋みがあるので、ミントなど風味の良いハーブとブレンドすると飲みやすくなります。
潤いを保つ、気持ちの安定
先の見えないコロナ禍。これからの季節、感染予防のためにはしっとりと喉を保湿するハーブ「リンデン」、「マシュマロウ」、「マロウブルー」などのハーブが役立ちます。
より保湿効果を高めるために砂糖やハチミツをプラスするのも良いでしょう。ただでさえ気温が下がり、日照時間が短くなる秋はメランコリックになりがちです。リンデンには、身体を温めたり、感情の揺れを和らげリラックスを促す働きもあります。良質な眠りのためにもお休み前に一杯のハーブティーを習慣するといいでしょう。
乾燥と腸内環境の関係
乾燥の影響は腸にまで及びます。秋に便秘がちになるのは、潤い不足が原因。上記の潤いをあたえるハーブはもちろん、整腸作用のある「ダンディライオンルート」がおすすめです。
ダンディラインルートは、たんぽぽの根っこのこと。秋に採取した根が最も薬効が高いとされ、掘り上げた根は洗ってから刻み、フライパンでローストしたものをハーブティーとしていただきます。自然食品店で見かけるタンポポコーヒーは、これを深煎りしたものです。
利尿作用のある葉は、食材として炒め物にしたり、ピザのトッピングにしても面白いです。さらにたんぽぽの花には、瞳の健康に良いルテインが含まれているので、活用しない手はありません。エディブルフラワーとして、お弁当やサラダに散らすと華やかな一品に。花をつける春咲きまで覚えていてくださいね。
タンポポは根から葉、花に至る全草が、私たちの健康に役立つ草なのです。
RECIPE 02.
秋のハーバルレメディ
乾燥から喉を守り保湿する、オリジナルハーブシロップをつくってみましょう。粘液質を含むハーブに、今の自分の体調に合わせたハーブをプラスしてカスタマイズ。お腹の不調には「メドウスイート」「カモミールジャーマン」、むくみが気になる方は「ホーステール」「赤ブドウリーフ」、頭痛や肩こりのある方は「ローズマリー」「ラベンダー」、冷えには「サフラワー」「シナモン」「ジンジャー」がおすすめです。全て揃っていなくてもOK。効果を期待する場合は2~5種を使用するのがおすすめです。
<材料>
□ 粘液質を含むハーブ(リンデン、マシュマロウ、マロウブルー)+ご自身の体調に合うハーブ 合計20-25g程度
□ 砂糖(またははちみつ)500g
□ 水 500ml
□ 瓶(殺菌消毒しておく)
<つくりかた>
1. 鍋にハーブを入れて水に浸し、2時間以上時間置く。(保湿成分を抽出するため水出しに)
2. 1に砂糖を入れて、静かに温める。
3. 砂糖が溶けたら火を止めて冷ます。
4. 粗熱がとれたらハーブを濾し、殺菌消毒済の瓶に詰める。
5. 瓶に作成日と内容を記したラベルを貼りつけて、でき上がり。
◆飲み方:小さじ1杯(5ml)を直接またはお湯で薄めて飲んで下さい。
◆保存方法:冷蔵庫で保存。
◆保存期限:英国では1年保存可能とされるレシピですが、日本では2~3ヶ月。その季節のうちに飲み切ります。期限内でも万が一、カビなどの変質が見られた場合は、飲用せず廃棄して下さい。砂糖の量を少なくした場合は、保存期間がより短くなります。