写真・文/落合真林子 (OIL MAGAZINE/CLASKA)
Profile
落合真林子 Mariko Ochiai
大学卒業後、 出版社勤務を経て現在CLASKAの企画編集、 web magazine 「OIL MAGAZINE」 編集長。 東京で夫、 小学生の娘、 猫2匹と暮らしている。 趣味は読書とドラマ鑑賞。
学年が変わってすぐ、 学校で身体測定があった。
身長136cm。 記録用紙を見ると入学時から20cm近くも伸びている。
服がどんどんサイズアウトしていくわけだよなぁ、 と改めて思う。
子どもの衣替えは、 大人のそれよりも時間と手間がかかる。
もう着られなそうな服を念のため本人に着せて確認しながら、 処分するものと姪へのお下がり用に分類し、 足りなくなった分は新調して。
ちなみに我が家の場合、 新調することに関してはさほど苦労はない。 娘がそこまで服に強いこだわりを持っていないからだ。
娘のワードローブのメインはユニクロやリサイクルショップで買ったものなのだが、 それだけでは寂しいからブランドものの服も少しだけ。
それから、 私の母が娘のために手作りしてくれた服も多い。
昨年亡くなった母 (娘は “のんちゃん” と呼んでいた) は手先が器用で、 何でも上手につくる人だった。
特に洋裁が大の得意で、 私や弟が小さかった頃にはワンピースにズボン、 シャツ、 パジャマ、 トレーナー、 そしてコートまで、 とにかく何でもミシンで手作りしていたそうだ。
そんな母だったので、 娘の誕生をきっかけに洋裁熱が再燃。
実家に帰る度に新しい服がたくさん出来上がっていて、 そのどれもが私が着たいくらい可愛いものだった。
衣替えをしながら、 母がつくってくれた服の数がかなり少なくなっていることに気が付いてしまった。
あんなにたくさんあったのに。
今年の春夏になんとか着られそうなのは、 最後につくってくれた青い花柄のワンピースくらいだろうか?
母がいなくなってしまったことを改めて思い知らされた気がして、 しばし考え込んでしまった。
「これ、 もう小さいかな?」
娘にそう声をかけると、 「まだ着るよ」 という返事が。
「のんちゃんがつくってくれた服は絶対に捨てないよ」
私の気持ちを代弁してくれているかのようなストレートな物言いに、 心が救われた気がした。
誰かのことを思いながら生み出される 「もの」 は、 尊いものだ。
つくった人が近しい人であればなおさら愛着を感じるし、 それが何かの事情で使えなくなったとしても、 傍に置いておきたいと思う。
来年の今頃は、 娘のワードローブから母がつくった服が完全に姿を消してしまうのだろう。
想像するだけでとても寂しいが、 それは仕方のないことだ。
自分のために手を動かしてくれた誰かのことを思って、 ものを大切にすること。
そういうものを所有したり身に着けることに、 幸せや嬉しさを感じること。
そういう感情を娘に教えてくれた母には、 本当に感謝しかない。
お母さんありがとう。