「邪気を
写真:速水真理(OIL MAGAZINE / CLASKA) 文:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)
教えてくれる人
水野 さと美さん
岐阜県多治見市在住。「シュクレ メディシナルハーブ」主宰。ワーキングマザーとして過ごす慌しい日々を、自然の香りやハーブに癒され穏やかに乗り越えてきた経験を元に、ハーブ療法ワークショップを展開。ドイツから輸入される上質なハーブを原料に、ブレンドハーブティーも創作。
www.sucre-medicinalherbs.com
Instagram:@sucre_medicinal_herbs
「お屠蘇」ってなんだろう?
邪気を祓い不老長寿をもたらすものとして、大晦日に井戸の中に漢方薬を吊るしそれを元旦に引き上げ、酒に浸したものをいただく、という中国の習慣が起源とされています。
日本には平安時代に宮中儀式として取り入れられ、江戸時代になると庶民の間に広く広がりました。新しい年のはじまりに家族の健康を祈願する慣わしとして、現代に受け継がれています。
今回は、岐阜県多治見市で「シュクレメディシナルハーブ」を主宰する水野さと美さんに、ハーブを使ったお屠蘇づくりをレクチャーして頂きます。
生薬をハーブに置き換えて
一般的に、屠蘇散にはどのような生薬が使われているのでしょうか?
- 水野さん(※以下敬称略):
桔梗 、紅花、陳皮 、丁字 、白朮 、浜防風 などといった5~10種類の生薬が材料になります。今回は、たとえば解熱・鎮痛・鎮静作用のある桔梗はショウガ、発汗・去痰・鎮痛作用のある浜防風はリコリスといったかたちで生薬を別のハーブに置き換えて、ご自身の体調に合わせてハーブを自由にカスタマイズしたオリジナルお屠蘇づくりを提案させて頂きます。
ショウガや紅花もハーブの一種なんですね。ちょっと意外でした。
- 水野:
- そうですね。カモミールやレモングラス、ローズヒップなどのようにハーブティーでおなじみのハーブもあれば、タイムやローズマリーのように料理をする際に使うものとして知られているものもあります。私たちの食卓でおなじみのワサビやミョウガ、シソなども「和製ハーブ」と呼ばれるものなんですよ。私たちは、無意識のうちに普段の生活の中でさまざまなかたちでハーブを取り入れているんです。
さて、今回はお屠蘇づくりに使うハーブを色々とお持ちいただきました。材料としては、ハーブと漬け込むみりんと日本酒。みりんは本みりんが良いそうですね。
- 水野:
- はい。風味の良さもありますが、アルコール度数が高いということがポイントなんです。「料理用みりん」とされる商品は、本みりんとは原料が異なりほとんどアルコールが含まれていないので、ハーブの成分を十分に引き出すことができないんです。新年のはじまりにいただく縁起物ですので、なるべく上質なものを選ぶことをおすすめします。
準備するもの(150ml分)
○ 保存するボトル(約200ml容量の密閉性が高いもの)
○ お好みのハーブ4~5種類(合計で全体の容量の1/3を目安に)
○ 本みりん、日本酒(合計150mlになるように)
テーマを決めてハーブをブレンド
使用するハーブの種類は、どれくらいがいいのでしょうか?
- 水野:
- それぞれのハーブが私たちの身体にもたらす作用を踏まえて使用するハーブを決定していただくのですが、「あれもこれも」と多くの種類を使用するよりは、何かテーマを決めて4~5種に絞り込んでいただいた方がいいと思います。今回は、寒い季節特有の悩み別に3種のブレンドを考えてみました。
ハーブは、いわゆるシングル(単品)ハーブと呼ばれるものを使用するのですが、今回使用するハーブのうちいくつかは、シュクレメディシナルハーブのオンラインショップで購入していただくことも可能です。とてもシンプルな手順なので、是非挑戦してみてください!
Recipe 1. 冷えとり
Recipe 2. 滋養強壮
Recipe 3. むくみ対策
ハーブお屠蘇の仕込みかた
01.
選んだハーブをボトルに入れる
ハーブの分量は、全体の容量の1/3程度を目安に。それぞれのハーブの割合は、期待する作用によって調整してOK。
02.
本みりんと日本酒を合わせて注ぎ入れる
本みりんと日本酒を混ぜる時は、好みの割合で。日本酒の割合が多いと辛口、本みりんの割合が多いと甘口の味わいになる。
03.
完成!(うつわに移す際は濾すと飲みやすい)
完成後、2~3週間常温で寝かせれば飲み頃に。
元日の朝にいただきます
- 水野:
- 一般的には、若い人から年長者へと順番に盃をすすめ、3口で飲むのが作法とされていますが、地域や各家庭によって作法が異なることもあるようです。アルコールが入っているので、未成年者や妊娠中の方は口をつけるだけの真似ごとでもいいとされています。
どんな味わいに仕上がるのか楽しみですね。お屠蘇は日本のお正月に欠かせないものですが、また少し違った気分でいただけそうです。ハーブそのものへの興味も沸いてきました。
- 水野:
- ハーブにはさまざまな有効成分が含まれているので、上手に取り入れることで心身共に健やかに過ごすためのサポートをしてくれます。それぞれのハーブの作用を知り、お好みの方法で日常に取り入れてみてください。
<お知らせ>
2020年初旬より、水野さと美さんによる連載「sucre medicinal herb のハーブ外来」をスタートします。
テーマは「ハーブの力で、生活と身体を整える」。ハーブに関する基礎知識や、季節ごとの身体の不調をメンテナンスする手づくりアイテムをご紹介していきます。