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ホンマタカシ 東京と私 TOKYO AND ME (intimate)

TOKYO AND ME, other stories. Part 2

先月に引き続きお届けする特別編。今回は、緊急事態宣言以降の“東京の夜”の風景をお届けします。

写真:ホンマタカシ 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

東京の夜の風景
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東京の夜の風景

HOW TO SEE

歴史的なこと、意義深いこと、意味深長なことを見極めようと焦るあまり、肝心な事柄を見逃さないようにしよう。とても耐え難いこと、まったくもって許し難いことを。ひどいのは炭坑爆発ではなく坑内の労働のほうなのだ。「社会不安」はストの時期だけ「憂慮される」のではなく、一年三百六十五日、四六時中耐え難いはずなのである。

(ジョルジュ・ペレック「何に着目すべきか?」塩沢秀一郎訳より)

文:加藤孝司


当初、7都府県に発令された緊急事態宣言は4月12日には全国に拡大。医療崩壊を招きかねないと危惧される東京、大阪を含む13都道府県は特別警戒地域に指定された。

2020年5月4日。
当初5月6日までの期限付きで発令された戦後初となる緊急事態宣言であったが、この日、内閣総理大臣安倍晋三氏より5月末日までの暫定的な延長が宣言された。
緊急事態宣言の延長に際しては、対象地域における極力8割接触回避の継続が求められた。

時はゴールデンウィークの最中。ここ東京ではゴールデンウィーク前に東京都知事より「今年の約2週間のGWはステイホーム週間で」というメッセージを都民に向けて発表。
実直にそれに従う人もいれば、気晴らしに街に出る人もいた。例年であれば帰省や旅行に出かける人々でごった返す空港や駅などのターミナルは人もまばらで閑散としており、例年のゴールデンウィークとはまったく異なる風景が列島には広がった。

前回の世界的なウイルス大流行といえば、ちょうど1世紀前の「スペインかぜ」がある。
1918年から1920年にかけて流行し、世界中で2000万もの人々が亡くなったというが、その際にも人との接触を減らすことが感染爆発を阻止する最も有効な手段とされた。
そのためヨーロッパの国々の都市では、大量のワインを買い込んで家に閉じこもる人が続出。ただ同時にウイルスの爆発的な流行を前に、ウイルスは自分とは無関係と高をくくり普段通りの暮らしをする人もいたし、感染者の少ない郊外の街に移動する人も多かったという。このあたりは現代の新型コロナウイルスが蔓延する現在とさほど変わりがない。

世界的な自粛ムードの中「ステイホーム」が新たな価値基準となり、人々が思い思いに家で過ごす様子がSNSやテレビに流れる。
本を読む、映画を観る、料理をする、掃除をする、身の回りを整える、身近な人や事柄と向き合うこと。これほどまでに日常的なありふれたことが衆目を集めたことはかつてなかったのではないだろうか。

2020年5月14日18時。
内閣総理大臣が39県における緊急事態宣言の解除を表明。特別警戒地域の一部も解除された。残るは東京、大阪、京都を含めた8都道府県となった。
解除された地域は引き続きの三密の徹底回避を保持しながら、新しい生活様式のガイドラインを参考に事業活動を段階的に本格化させるという、コロナ時代の新しい日常に突入した。

2020年5月25日。
新規感染者が一定数に抑えられているとして、すべての都道府県において緊急事態宣言が解除。それを受け東京都では段階的に施設等の休業解除を行っていく。

よく言われることだが情報化が高度に進んだ現代においては、世界は隅々まで細分化され、人々の価値観の多様化も顕在化する。と同時に情報が行き渡ることで、18世紀の産業革命においてもそうだったように、グローバリゼーションの大波が起こり、世界は一気に均質化の方向に向かうと危惧された。

だがそこではからずも浮かび上がってきたのが、「ローカリティー=個」の重要性だ。

ここ数年続く個々の生活重視、地方の魅力再発見の機運、あるいは食やクラフトブーム。そのようなローカリティーあふれるものの豊かさが見直される背景にあるのは、均質化へ向かおうとする社会に対する人間の防衛本能なのかもしれない。

厚生労働省より提言された新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」。
その意味はともかく、言葉としての響きは美しいがどこかお仕着せがましさも残る。

移動の自粛、働き方改革、リモートワーク、自粛疲れ、気の緩み、行動変容、日常の変化、ありふれたもの、失ったもの、新しく手に入れたもの。
生活の仕方は誰かに指示されて決めるものでもない。
患者数が増大すればするほどに人々に対するウイルスの脅威は増大するが、減少すればそれだけ人々の気持ちや注意力も散漫になる。
だからこそ、ひとつのところにとどまりながらも、根本的に何が問題なのかを考え、思考を滞らせてはならない。
自ら情報収集をし、経験をもとに何が最適かを判断し、自らに必要なことを選び取る知恵を蓄えることが現代の私たちには求められているのではないだろうか。

東京の夜の風景

東京と私


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2020/05/30

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