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ホンマタカシ 東京と私 TOKYO AND ME (intimate)

Vol.13 石若駿(音楽家)
PLACE/東池袋(豊島区)

写真:ホンマタカシ 文:加藤孝司 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

音楽家・石若駿さん
音楽家・石若駿さん
豊島区東池袋の風景
豊島区東池袋の風景
豊島区東池袋の風景
豊島区東池袋の風景
音楽家・石若駿さん
豊島区東池袋の風景
豊島区東池袋の風景
豊島区東池袋の風景

Sounds of Tokyo 13.(Morning in KAKULULU)


「KAKULULU」というカフェがきっかけで、東池袋に通うようになりました。はじめて来たのは6年前で、ジャズ好きで歳が近いということもあって店主のゆうさんとはすぐに意気投合しました。

当時は高田馬場に住んでいて、だいたいオープンと同時に来て、カウンター席に座ってコーヒーを飲みながら音楽談義をして。そのあとはランチを食べてふらりと出かけ、また戻ってきてお茶をする日もあれば、夕方に来てコーヒーを飲んで気分が良ければビール、そしてそのまま夜、なんて日もありました。

東池袋には自転車で来ることが多くて、都電荒川線に乗って来る時には「鬼子母神前駅」で途中下車してご飯を食べることもあります。KAKULULUが休みの日はスタッフのみんなと雑司が谷まで歩いて「熱烈上海食堂」という店でご飯を食べたり、サンシャイン60の裏にある「IKE・SUNPARK」でのんびりすることも。
曲作りに関しては目的もなく歩いている時に音楽が浮かんでくることが多くて、東池袋に来る途中の鬼子母神の参道や都電の線路沿いの景色が曲のインスピレーションになったこともありました。

高田馬場から引っ越した今でも仕事と家にいる日以外はKAKULULUにいるような感じで、店内でライブもやらせてもらうようになってからは一層この場所が自分の生活の中心になってきました。コロナ禍になり人前で演奏できなくなった時には、地下に機材を持ち込んで録音させてもらったこともありましたね。

これは店主のゆうさんの人柄もあると思うのですが、この店は不思議とミュージシャン同士が居合わせることがあって、ここから生まれている音楽も多いんです。
それは本当に偶然で、たとえば地下のギャラリーの展示をたまたま見に来たミュージシャン同士が繋がってバンドを組んでライブやレコーディングをすることがあったり……。「元を辿ればここだったよね」ということが起こる場所になっているんです。

東京には音楽を楽しめる場所がいくつもありますが、僕の周りのミュージシャンたちはここを拠点として意識しているところがあって、音楽的にハプニングする、僕が思う「東京の音楽」の中心地になっています。
「今」という時代と場所も一緒に音になって、世の中に一石を投じている。それがライブハウスではなくカフェであるというのも面白いですよね。

今思っているのは、近い未来に「東池袋の音楽」という文字を見ただけで音楽が立ち上がってくるような状況にしていきたいということ。
だからみなさんにも東池袋という場所を気にしておいていてほしいですね。

東京で暮らしはじめて、今年で13年目になります。
札幌に住んでいる時からドラムを叩いていて、その頃から東京への憧れはものすごくありました。東京からすごいミュージシャンが演奏に来た時には、子ども心ながらに「東京に行けばこんなすごいミュージシャンたちと一緒に演奏ができるんだ!」と感じて、それを目標に頑張ってきました。
高校進学で東京に来てからは、昼間は学校でクラッシックの勉強をして放課後はシンバルを背負ってセッションにでかけ、また学校に行くという毎日でした。
東京という街を意識するより前に、音楽に振り回されながら、自分でも音楽を振り回している感じというか……。子どもの頃の憧れと、そこに「音楽」と「場所」と「人」がくっついている感じが今もずっと続いている感覚です。

東池袋との出合いもそうですが、今までは自分が飛び込んでいく側でした。でもこれからは、東池袋を拠点に「自分たちから起こす」ことを意識していきたいと思っています。以前はNYやオーストラリアに行って音楽をしたいと考えていたこともありましたが、今はここで生まれる物事を大切に、「東京の音楽」を世界に発信したいと思うようになりました。 それを、ここ東池袋からやっていきたいと考えているところです。


石若駿 Shun Ishiwaka

1992年北海道生まれ。両親の影響で幼少期よりジャズやクラシックに触れて育ち、13歳からクラシックパーカッションをはじめる。東京芸術大学音楽学部附属音楽高校への進学を機に上京。その後、同大学音楽学部器楽科打楽器専攻を卒業。現在は「くるり」をはじめとする様々なミュージシャンのサポートメンバーとして活躍しながら、自身でピアノを弾き歌ものに取り組む「SONGBOOK」プロジェクト、様々なミュージシャンと協働する「Answer to Remember」など複数のプロジェクトを主宰する。
www.shun-ishiwaka.com
Instagram:@shun_ishiwaka

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2021/01/31

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