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ホンマタカシ 東京と私 TOKYO AND ME (intimate)

Vol.26 山田由梨(劇作家・演出家・俳優)
PLACE/池袋西口(豊島区)

写真:ホンマタカシ 文:加藤孝司 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

山田由梨さん
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Sounds of Tokyo 26. (At Ikebukuro Nishiguchi Park)


杉並区に生まれて、これまでずっと東京で暮らしてきました。
中学の時は阿佐ヶ谷や吉祥寺のゲームセンターに友達とプリクラを撮りに行ったり、古着にはまってからは一人で下北沢に買い物に行くようにもなりました。

井の頭線沿いの街は自分にとって東京の原風景というか、どこか“安全地帯”のような感覚があったんです。
学生時代、友達3人と終電で渋谷に集合して、夜通し吉祥寺まで歩いて、「富士そば」を食べて解散! なんてことをしたことがありました。今考えると、なんて無謀なことをしたんだと笑ってしまいますが(笑)。

学生時代からどちらかといえば快活でクラスの中でも発言をすることが多く、行事ごとには張り切って参加するタイプでした。
通っていた高校は、文化祭の時に全クラスそれぞれ一演目公演するのが恒例という少し変わった学校で、そこではじめて舞台の演出を経験させてもらいました。
その時、本当に楽しくて……。自然と、大人になっても「友人たちと創作をする」ことを続けていきたいと考えるようになりました。

高校卒業後は「立教大学」の現代心理学部映像身体学科に通い、映画を学びながら在学中に友人と一緒に劇団「贅沢貧乏」を立ち上げました。

立教大学は池袋西口にキャンパスがあるのですが、私が通った映像身体学科のキャンパスは埼玉にありました。でも毎日池袋を経由して通っていたこともあり、大学の友達と池袋で会ったり、池袋キャンパスで自主制作の映画を撮影したこともありましたね。

贅沢貧乏の初舞台は大学キャンパス内、二度目は池袋駅前にある「東京芸術劇場」の近くにあるビルの一室にある小さな小屋でした。
みんなで精いっぱい試行錯誤して……。その当時はいろんなことがありすぎて、今となってはかなり遠い昔の話のような気がします。

池袋はその日の気分で過ごす場所を選べる、いろんな顔を持った街です。

駅周辺は雑然とした感じがありますが、大学の方に行くと古い珈琲屋さんがあったり住宅街の中にいい感じの細い路地があったりして、よく散歩をしていました。
立教生が入り浸っている「ドリームコーヒー」や学校のそばのラーメン屋さん、「湯~ゆランドあずま」というスーパー銭湯はよく通った思い出の場所です。

池袋といえば、JRの線路沿いに立っている大きな煙突。
歩いている時にふと顔を上げるとそこにあるというか、どこか街のシンボルのような感じで好きでした。煙突越しに見る夕焼けがとても綺麗なんですよ。

大学を卒業後、25歳の時に「東京芸術劇場」で公演させて頂いたのですが、それが劇団にとってはじめての公共劇場での公演でした。
学生時代に“私たちもいつかここで”と憧れの眼差しで眺めていた場所だったのですが、いざ実現してみるとあっけないというか、実感がないというか……「アレ?」という感じでしたね(笑)。
劇団としてひとつの大きな夢が叶ったこともそうですが、池袋で、というのもとても嬉しかった。やっぱり、何かと思い入れのある街ですから。

今も変わらず大好きな街なのですが、ここ数年で池袋を含めた東京全体が“整える”方向に進んでいて、人との出会いや違和感も含めて“何か”が生まれにくい場所になっていきつつあるなと感じることがあります。

駅前はどこも似たような印象に整えられてしまって、街ごとの個性が無くなって。
東京が均質化することで、“整った人”しか来られない場所になってしまったら少しつまらないなぁと寂しく感じたりします。
こういう違和感や、今の東京の状況に追いついていけない感覚も、これから自分がつくっていく作品の中に表出していくんだろうなと思います。

自分が感じている社会的な問題や課題を作品を通して世の中にシェアしたいと思う時、日常生活の中で自分が感じる“小さな実感”を媒介にすれば、誰かの心と接続できるかもしれない。
そうして繋がった方たちが、さらにその先にある“何か”を考えるきっかけを少しでもつくることができたなら……。

そんなことを考えながら日々東京で暮らし、作品づくりをしています。


山田由梨 Yuri Yamada

劇作家・演出家・俳優。2012年に劇団「贅沢貧乏」を旗揚げ、以降全作品の劇作・演出を務める。『フィクショ ン・シティー』(17年)、『ミクスチュア』(19年)で岸田國士戯曲賞最終候補にノミネート。2020・2021年度セゾン文化財団セゾンフェローI。2019年初演の『わかろうとはおもっているけど』が国際交流基金Youtubeにて無料配信中。近年はTVドラマの脚本や小説の執筆なども手がけ、短編小説『目白ジャスミンティー』が『群像』に掲載。「日本版セックス・エデュケーション」と評されたAbemaTVオリジナルドラマ「17.3 about a sex」や現代の東京を生き抜く29歳独身女性たちを描いた「30までにとうるさくて」が好評配信中。

Instagram: @yamadayuri_v
Twitter: @YYUUUUYYam

>『わかろうとはおもっているけど』
https://youtu.be/RfR3Z_RrGU8

山田由梨さん

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2022/04/30

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