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堀井和子さんの「いいもの」のファイル

第42回:ALPHABET の本/長野産プルーンのジャム/フェルトバッグ/ストライプのマフラー

文・写真:堀井和子

ALPHABET の本

 Jeannette Eyerly の詩と Fritz Scholder のイラストによる "AN ALPHABET BOOK for Adults" の本。2冊持っているので、左が表紙、右がページを開いたところです。(2000年に Nazraeli Press から出版されました)

 Scholder 氏のダイナミックで自由な線に、心を打たれます。動物の動きや表情の切り取りかたが面白くて、見入ってしまうのです。Eyerly さんの言葉は子供たちのための絵本と違って、時々鋭く、時々刺さってくる感じでしょうか。生成色の紙に黒と赤の2色刷りで、表紙カバーのデザイン、レイアウトも趣きがあります。

 右ページの動物はスカンクで、アルファベットのSの項。
 アメリカに住んでいた頃、道を歩いていてスカンクに遭遇したことがあります。このイラストの真正面からのアングルが、その時のフワッと立った尻尾の縞々や、“わ!どうしよう”という緊張感を、記憶の中から鮮やかにすくい取ってくれる気がしました。

長野産プルーンのジャム

 pâtisserie Sadaharu AOKI paris の、長野産のプルーンのジャムです。
 AOKI 氏が、長野産の果物のジャムを軽井沢町で製造していることを記事で知って、興味を持ちました。

 両親が仕事で松本にマンションを借りて東京と往復していた頃、しょっ中、車で松本を訪ねていました。地元の方の庭や畑で採れた杏、プルーンのジャムを味わって、とても驚いたことを覚えています。熟した果実の深い香りとコク、しっかり甘いのですが、甘さが大事な風味を閉じこめているような煮詰め具合 —— ジャムについての認識が、すっかり変わったように思います。

 このジャムも甘さがあって、ちょうどよい濃度で、たいそう美しいテクスチャーです。澄んだ味わいの後に、長野のプルーンの個性が確かに香り立ちます。

 プルーンのジャムの色が引き立つパッケージデザインもシックで素敵です。

フェルトバッグ

 ニース旧市街のマルシェ北側の狭い小路を歩いていて、子供用品の店で見つけました。縦36cm 横30cm のフェルトのボディに、文字をプリントした長方形の白地部分を縫い付けてあって、持ち柄はグレー、留金も付いています。

 紫色の中で一番陽気な方の、少し赤みのあるこの色には、なぜかかれてしまうみたいで、迷わず、選びました。"toujours" という文字も何気なくて気に入っています。この紫のフェルトバッグを持って出かけると、気持ちが弾んで温かくなります。

フェルトバッグ

 関阿由さんの手織りカシミヤストールは、黒に近い濃紺と白のストライプ柄。今年3月に開かれた受注会で選び、10月末に届きました。

 鮮やかな濃いピンクや赤、黄色のストールも魅力的でしたが、この、きりっとした潔い濃紺と白のデザインを首に巻いてみたくなりました。10月末から東京は暖かい日が続いていたので、やっと毎日使える寒さに。

 紫のフェルトバッグや、ミルクたっぷりのカフェ・オ・レ色のセーターと組み合わせるのが嬉しい今年の12月です。


Profile
堀井和子 Kazuko Horii
1954年東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」


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2021/12/21

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