文・写真:堀井和子
4月にギャラリー・セントアイヴスで開かれていた、栗田荘平さんの作陶展に伺いました。
栗田さんのこげ茶色の皿を日本民芸館で買って、丹波焼の使い勝手のよさ、使い込んで美しくなっていく表情を知りました。
(「いいもの、みつけました」の
第57回)
磁器とは違って、民芸の陶器の中には、洗った後、湿度が抜けにくかったり、乾くのに時間がかかったりするタイプが多く、我家では、1~2日、テーブルの上にふせて乾かすようにしています。
丹波焼の器は、使って洗い終えた後、自然に湿度が抜けるのがいい。
使い勝手がよいと、使う頻度も増し、洗っているうちに、いつのまにか釉薬がほんの少し擦れたように素直な表情になって、それがとても魅力的に感じられます。
1990年頃、丹波の窯元を廻るドライブ旅行をしたことがあって、その時購入した卵用の黒い茶碗を、飯碗として毎日使い続けているのですが、丈夫で、欠けることもなく、今、何ともいえない趣きに。
こちらは呉須鉄線描水筒(幅11.5cm 奥行9cm 高さ9.7cm)。
栗田さんが手編みした藁縄が左右に結びつけられ、、壁に掛けてありました。
“野山を散策する時に水を入れて・・・”と、新しい作品を説明してくださる様子がすごく楽し気だったので、手に取って見せていただきました。
呉須の紺色と鉄釉の茶色の線は、筆遣いが飄々としていて、見つめていると、長閑に気持ちがほどけてくるような存在感が素敵です。
水筒を選んだのは、自分でも意外でしたが、これは、ただ置いて見ているだけでワクワクする作品なのかもしれません。
鉄地灰釉鉢(直径20cm 高さ7cm)も、新しく試した色だそうです。
ややカーキ色がかった茶色の粗い点状の焼き具合は、じっと見ると、ドラマティックな展開に思えてきます。
“地元の四辻の土を使い、ストーブで燃やした木灰で作る釉薬を掛けて、登り窯で赤松の薪を使って、家族で焚いています”と、陶器に添えた紙に説明がありました。
(「いいもの、みつけました」
第61回に栗田さんの窯の薪などの画像があります)
新しい釉薬や新しい形に挑まれているんですね。
土や木、火の力を借りて生み出す丹波焼の力強さ、奥深い魅力を、使いながら知っていくのが、また楽しみに。
南仏のサン・ポール・ド・ヴァンスにある、マーグ財団美術館の石像は、Eugène Dodeigne の作品。
1980年に上野の国立西洋美術館で見た「ギリシア美術の源流展」は、私の忘れられない展覧会の No.1 かもしれません。
エーゲ海キュクラデス諸島出土の石像のモダンなフォルムに胸が躍りました。
ブランクーシやジャン・アルプの作品も今、気になっていますが、この石像も、もう一度近くで見たいです。
5月中旬の代々木公園の道路脇斜面の雑草。
ニワゼキショウやヘラオオバコなどの花も見えていて、初夏の草の元気な緑に圧倒されます。
Profile
堀井和子 Kazuko Horii
東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」