文・写真:堀井和子
LE CAFE DU BONBON が、この6月からパントリー&アトリエとして、お菓子の他、材料や道具、食材などの販売を再開しました。
こちらは、久保田さんが新しく手がけた Biscuits Sables au Beurre(バター・サブレ)。
日本で製粉しているフランスの準強力粉、発酵バターを使い、甘さを押さえているせいか、粉の風味、香りに私たちが近付ける気がしました。
指先でつまめる小さなサイズ、薄さが、潔くて粋なサブレです。
16.4cm×4.4cm の細長いプロポーションの銀色の缶に、サブレが並んだ様子がとても美しい。
先月、食料品の買い物へ行く途中、ショーウィンドー越しに並んでいるのが目に入った、PIERRE GUARICHE のメタルチェアチューリップ。
GUARICHE は、50年代フランスのデザイナーで、戦後の木材や金属を自由に使えなかった時代に、新素材を追求して、モダンで手頃な値段の家具をデザインしました。
私が初めてこのチェアを知ったのは、20年程前のインテリア雑誌の記事で。
テキスタイルを剥いだ座面は、表面が擦れたようなアルミニウムの銀色。
脚はマットな黒で控えめな印象ですが、背もたれの下部分のホールから風が抜けていくようなフォルムが、何とも魅力的。
どうしても実物を見てみたいなぁと思いました。
2010年初夏にフランスの地方を廻る旅の後、パリで、50年代の家具を扱うインテリアの店を廻って、このチェアを探したこともあります。
Forme Utile では、GUARICHE のベージュの布地張りの木製チェアを見ることができましたし、他のデザイナーの黒い革のデッキチェアも、座面に丸い穴が3×3くらい空いていて、かわいかったのを覚えています。
Galerie Patrick Seguin では、PERRIAND の木製スツールや、 PROUVÉ のメタルのドアが、広くてシンプルな空間にレイアウトされた様子に圧倒されました。
けれど、あの銀色のチェアには出合えませんでした。
実際に見ることができたのは、数年経過してから東京で。
同じ頃、白金高輪のヤエカホームストアや原宿のテンベア、表参道ユトレヒトのビルの1階のファッションのお店に什器として置かれているのに気づいて、そのたびにワッと飛び上がって喜んでいました。
GUARICHE のメタルチェアチューリップは大好きだけれど、我家のリビング、ダイニング、図書&在庫ルームに置くと、きっと浮いてしまうので、ずっと買う決心はつきませんでした。
そんなこともあり、いつも、ここで見ることができるというギャラリーやお店が散歩圏内なら一番嬉しいかなぁと。
先月見たこのチェアは、オーナーが久しぶりにやっと手に入れたそうで、しばらくはここに置かれているんじゃないかと期待しています。
Profile
堀井和子 Kazuko Horii
東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」