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ホンマタカシ 東京と私 TOKYO AND ME (intimate)

Vol.22 藤原麻里菜(コンテンツクリエイター・文筆家)
PLACE/大島(江東区)

写真:ホンマタカシ 文:加藤孝司 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

藤原麻里菜さん
藤原麻里菜さん
藤原麻里菜さんのアトリエ
藤原麻里菜さん
江東区大島の風景
江東区大島の風景
江東区大島の風景
江東区大島の風景
江東区大島の風景
江東区大島の風景
江東区大島の風景
江東区大島の風景

Sounds of Tokyo 22.(A man who plays the harmonica in Ojima)


生まれは横浜市の戸塚です。田舎でも都会でもなくて、電車に乗って横浜に行けば大抵のものが手に入るし、行こうと思えば原宿にも簡単に行ける。そんな街です。

父がデザイン関係の仕事をしていたので、物心ついた時から家には大きなパソコンがありました。小学生の時にインターネットを使うようになって、ブログや「2ちゃんねる」を見ているうちに自然とサブカルに興味を持つように。関内にある古本屋や「ディスクユニオン」に行って、お小遣いで古本やレコードを買ってテレビでは得られない情報に触れるのが楽しみでした。

小中学生の頃にギターにハマったのですが、まわりに同じ趣味の人がいなかったから放課後はずっと家でギターを弾く日々。
高校ではジャズ部に入部しました。なんでジャズだったかというと、同じ音楽系の部活でも吹奏楽部はどこか健康的な感じが嫌だったし、軽音楽部は「青春!」っていう感じに馴染めなかったからです(笑)。
ジャズ部は私が入部する前年に設立されたばかりで、部員は3人の先輩だけ。一緒に入部した5~6人の同級生はみんな楽器未経験者で、新入生の私が楽譜の読み方を教えていました。
そこではじめて共通の趣味を持つ友だちができたことで、さらにサブカル好きが加速。今と比べると、学生時代はひたすら「好き」に動かされて生きていた感じがします。

その頃から、物をつくることが好きでした。
見様見真似でフィギュアをつくったり……今思うと当時から中二病みたいなことをしていましたね(笑)。高校生の頃は、怪我をしたら写真を撮って「Tumblr」に投稿したり。

地元の戸塚を離れて、東京で最初に暮らした街は中野。「サブカルといえばこの街」ということで選びました。
でもいざ暮らしてみると、全てが24時間動いている感じに馴染めず気持ちが疲れてしまい、3ヶ月で引っ越しました。近くには仲の良い友だちがたくさん住んでいたのですが、みんなから少し距離を置きたくなって。
「知り合いが一人もいないところに行こう」と思って選んだ街が、西日暮里でした。

山手線沿線だけど家賃も安いし、街としても気に入って3年くらい住みましたね。その後シェアアトリエに入居したことをきっかけに、江東区大島に引っ越してきたんです。今は、自宅とアトリエを行ったりきたりする日々です。

発明をするようになったのは、Eテレの番組「ピタゴラスイッチ」がきっかけでした。
ある時、番組を真似て家の中にあるものを使った壮大な装置をつくろうと試みたのですが、できあがったのは食卓に乗るくらい小さくて、仕掛けも雑なものでした。「……あれ?」って(笑)。

その時に「自分はものづくりには向いていない」と思ったのですが、どうしても納得いくものをつくりたくて試行錯誤する中で、逆転の発想的な感じでひらめいたのが、「無駄づくり」という言葉でした。
無駄なものだから世間的には“失敗”とされるけど、そもそも無駄をつくろうとしていたんだから“成功”ということにもなるんじゃない? そんな意味を込めています。

発明したものを自分で動画に撮って「Youtube」にアップしたら、少しずつ色々な人に「面白い」と言ってもらえるようになって、それが今も続いています。

「無駄づくり」という活動には、特にコンセプトはありません。
強いていえば、“無駄”といえるものがあることで、「なんの役に立たないものでも、世の中に存在していいんだ」と思える人が増えて、寛容や心の余白みたいなものに繋がったらいいなあと思っています。

と言いつつも……やっぱりコンセプトなんかは無くて、単純に役に立たないものが好き、というところが大きいですね。そういった自分の感覚と今の世の中が奇跡的に噛み合っていて、色々な人が「面白い」と言ってくれる。その感じを今は楽しんでいるところです。

大島を気に入っている理由は、多国籍で雑多なところ。昔ながらの居酒屋やお惣菜屋が残る下町の風景の中に、インド系のインターナショナルスクールがあったりして、面白いんですよ。

街を歩いていると、「ペットボトルのキャップが固いから開けて」とおばあちゃんに突然声をかけられたり、車椅子の人に手助けを求められたり。困っていたら素直に助けを求めたり、それに対して街の人が見てみぬふりをしないところも好きですね。
私も自分が転んだら「大丈夫?」と声を掛けて欲しいタイプなので、この街の人たちの他人との関わりが密なところがしっくりきています。

大島には空き地なのか公園なのか分からない、なんの目的もなさそうな場所が結構あるんですけど、地元の人たちがそこを自主的に守っている感じもいいんです。
空き地がすぐにマンションになってしまうように、「無駄」と思われているものって良いところを積極的に見つけて肯定して守っていかないと、どんどん埋められていってしまう気がしていて。

私たちにとって「無駄」は必要なもの。
そういう意味でも、自分の活動を通じて、人の心の中にある空き地のようなスペースを守れないかなと密に考えています。

将来の夢は、大島の駅近の団地に仲良くなった人を全員呼び寄せて自分たちのコミュニティをつくることです。
団地の1階にあるサイゼリヤの前に、ドイツの公共空間にありそうなかわいい椅子とテーブルが置いてある広場があるんですけど、そこが好きで。
広場を自分の部屋の窓から見下ろして仲間がいるのを見つけたら下に降りていって、そのうち自然とみんなが集まってくる……。
この街でそんな風に暮らしていけたら、と夢見ています。


藤原麻里菜 Marina Fujiwara

1993年生まれ。頭の中に浮かんだ不必要な物を何とかつくり上げる「無駄づくり」を主な活動とし、2013年からYouTubeチャンネル「無駄づくり」をスタート。現在に至るまで200個以上の不必要なものをつくる。2016年、Google社主催の「YouTubeNextUp」に入賞。2018年に国外での初個展「無用發明展- 無中生有的沒有用部屋in台北」を開催。2020年には『Forbes Japan』が選ぶ「世界を変える30歳未満」30 UNDER 30 JAPANに選出された。著書に『考える術』(ダイヤモンド社)、『無駄なマシーンを発明しよう』(技術評論社)がある。
https://fujiwaram.com/
Youtube:無駄づくり / MUDAzukuri
Instagram:@mudazukuri
Twitter:@togenkyoo

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2021/11/30

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