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TOKYO BUCKET LIST. 都市の愉しみ方 お菓子から建築、アートまで歩いて探す愉しみいろいろ。

第51回:早稲田・ライブラリー散歩/春樹、漱石、草間彌生

Profile
関 直子 Naoko Seki
東京育ち、東京在住。武蔵野美術大学卒業後、女性誌編集者を経てその後編集長を務める。現在は気になる建築やアート、展覧会などがあると国内外を問わず出かけることにしている。


大学には学生以外でも利用できる施設がある。
早稲田大学で言えば「會津八一記念博物館」や「坪内博士記念演劇博物館(enpaku)」など、長い歴史を誇る博物館がある。

5~6年前に行ったのは、會津八一記念博物館で行われた「ル・コルビュジエ ロンシャンの丘との対話 展 ル・コルビュジエの現場での息吹・吉阪隆正が学んだもの」展。 https://www.waseda.jp/culture/aizu-museum/news/2016/06/17/1208/

enpakuで開催された「あゝ新宿─スペクタクルとしての都市」展。 https://www.waseda.jp/enpaku/ex/4395/

その関連イベントとして行われた上映会とトーク「新宿1968-69 ドキュメンタリー/ハプニング/ジャズ」では、大学紛争の最中にバリケードの中で大隈講堂から持ちこまれたピアノを弾いた山下洋輔が、因縁の大隈講堂で47年ぶりに演奏。それを目の当たりにできたことは感慨深かった。
https://www.waseda.jp/enpaku/ex/4462/

“ライブラリー”
左)大隈講堂 右)會津八一記念博物館 写真:筆者提供
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坪内博士記念演劇博物館 enpaku 写真:筆者提供

さて、そのenpakuに隣接する建物が「村上春樹ライブラリー」になったらしい。
正しい名称は「早稲田大学国際文学館」。旧4号館という古い建物をリノベーションしたもので、うねるようなアーチが建物に巻きついている。予約をして訪れてみた。

“ライブラリー”
写真:筆者提供

一階の受付を経てオーディオ・ルームに。そこでは寄贈された村上春樹が蒐集した数万枚のレコードの中から選ばれた1枚を聴くことができる。
レコードに猫の顔と“Peter Cat”の文字のスタンプを発見。これは彼が経営していたジャズ喫茶の名前だ。40年ほど前まだ第一作の『風の歌を聴け』が出たばかりの頃だったろうか、千駄ヶ谷駅近くにあった医院の帰りに寄ったのがその向かいのビルの2階、外階段を昇るとあったジャズ喫茶「ピーター・キャット」。そこでキッチンに向かう村上春樹の後ろ姿を見かけたことを思い出した。そこでかけられていたレコードもここにはあるのだ。

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1階のオーディオルーム。 写真:筆者提供
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左)ミルト・ジャクソンとウエス・モンゴメリーの「Bags meets Wes!」。ジャズ喫茶「Peter Cat」のスタンプが押されている。 右)「Peter Cat」で使われていた椅子のレプリカ。 写真:筆者提供

オーディオ・ルームを出てぐるりと回ると壁に「村上春樹著作年譜」、続いて村上作品を網羅したギャラリーラウンジに出る。

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写真:筆者提供
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1階のギャラリーラウンジ。ここには1979年から2021年までの村上春樹作品と、世界各国で翻訳された村上作品など合わせて約1500冊が揃っている。奥に見えるのは『羊をめぐる冒険』に登場する村上が描いた羊男の絵。 写真:筆者提供

続いて2階の展示室へ。私が行った時は「建築のなかの文学、文学のなかの建築」展が開催されていて、隈研吾によるリノベーションの過程も知ることができた。

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2階の展示室。2月4日まで開催中の「建築のなかの文学、文学のなかの建築」展。これからは村上文学に限らず幅広い企画展を開催予定。 写真:筆者提供

1階まで降りて中央の吹き抜けにある階段本棚へ。
村上作品と、その文学を起点とした世界へと繋がる本が面白いカテゴライズで並べられている。
「生と死」「日常と非日常」「境界を超えて」「ジェンダー」「家族の物語」……。デボラ・トリーズマンやディヴィッド・ミッチェルのコーナーもある。

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写真:筆者提供
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写真:筆者提供
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写真:筆者提供
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写真:筆者提供

本棚に囲まれた階段を降りると、地下1階には村上春樹の書斎が再現されていて、カフェもあり、ラウンジには「ピーター・キャット」で使われていたグランドピアノも置かれていた。
カフェの店名は「橙子猫-Orange Cat」で、学生主体で運営されているという。
ここの棚や椅子、大きな木のテーブルは村上自身が使っていたもので、ワインのシミもそのままだと学生スタッフが教えてくれた。

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カフェに隣接した村上春樹の書斎を再現した空間。 写真:筆者提供
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カフェ「橘子猫-Orange Cat-」には「ピーター・キャット」で使われていたグランドピアノが置かれている。 写真:筆者提供
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「大机と本箱は、イタリア・トスカーナ州ルッカから日本の家具店が輸入したもので、自宅兼事務所で使用。」とあり、ワインのシミもそのまま。椅子も同様に使われていたものだという。 写真:筆者提供

早稲田大学を出て早稲田通りから漱石山房通りの小道に入ると、その石畳に猫のサインを見つけた。それをたどっていくと「新宿区立漱石山房記念館」が見えてくる。
ここは夏目漱石が晩年の9年を過ごした早稲田南町にあった自邸「漱石山房」跡地に建てられたもので、一階奥には漱石山房の一部が再現されている。地下1階には漱石作品や漱石の関連図書約4000冊が揃う図書室がある。

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写真:筆者提供
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左)漱石は明治40年(1907年)から大正5年(1916年)に亡くなるまでの9年間をこの地にあった「漱石山房」と呼ばれる家で過ごした。その跡地に2017年に開館した「新宿区立漱石山房記念館」。右)漱石の書斎が再現された一室。 写真:筆者提供
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地下1階にある図書室。漱石全集の全巻はもちろん漱石に関するあらゆる本が揃っている。 写真:筆者提供

次は漱石山房通りから外苑東通りへ出て市ヶ谷柳町方向へ。右にそびえる白い塔のような建築が「草間彌生美術館」だ。5階建て、2階から4階までがギャラリーで、5階はルーフトップギャラリーとライブラリーになっている。草間彌生関連の資料が閲覧できるスペースだ。

次回展示は3月になってからだが、必見の美術館だ。
早稲田にはこんな魅力的なライブラリーもあるし、他にも私を魅きつける場所がいくつかある。それはまたの機会に……。

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写真:筆者提供
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写真:筆者提供

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写真:筆者提供

<関連情報>

□早稲田大学 国際文学館(村上春樹ライブラリー)
https://www.waseda.jp/culture/wihl/
https://www.waseda.jp/culture/wihl/about/wihl
展示室「建築のなかの文学、文学のなかの建築」展は2月2日まで
・入館には事前予約が必要です。

□新宿区立漱石山房記念館
https://soseki-museum.jp
4月10日まで「漱石からの手紙」展開催中
https://soseki-museum.jp/tenji/7366/

□草間彌生美術館
https://yayoikusamamuseum.jp
展示替えのため2021年12月27日(月)~2022年3月2日(水)まで休館中
入場は日時指定の完全予約・定員制です。


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2022/01/26

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