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TOKYO BUCKET LIST. 都市の愉しみ方 お菓子から建築、アートまで歩いて探す愉しみいろいろ。

第74回:「小楽園」 というユートピア

Profile
関 直子 Naoko Seki
東京育ち、 東京在住。 武蔵野美術大学卒業後、 女性誌編集者を経てその後編集長を務める。 現在は気になる建築やアート、 展覧会などがあると国内外を問わず出かけることにしている。


代々木上原に不思議なティーサロンがオープンした。
漫画家・羽海野チカさんからの開店祝いの花輪がよく似合う、 コーラルピンクで彩られた外観。
飾り窓には、 桃の木のかたちの盆栽と華やかないで立ちのからくり人形がいる。
ティーサロンの名前は 「小楽園」。 小さな桃源郷とでもいうのだろうか?

小楽園
写真提供:KLOKA
小楽園
右はウインドウの華やかな無国籍な衣装の人形。 写真:筆者提供

店内は壁紙、 タイル、 欄間飾り、 床、 天井までさまざまな異国趣味がミックスされ、 それが共鳴してとらえどころのない魅力を生んでいる。

小楽園
写真提供:KLOKA
小楽園
正面左の扉はToilet。ここのインテリアも必見。 写真提供:KLOKA
小楽園
写真提供:KLOKA

ショウケースに並ぶのは山のかたちをしたチョコレート 「山菓子」。 そして缶入りのお菓子 「小楽園おこし」。
チェコやモロッコの花の描かれたグラス、 チャイの入ったポット、 さまざまな国の装飾がテーブルに一堂に介して独特だ。

小楽園
左上はメニュー。下は小楽園の和風チャイとボンボンショコラ雛山2個セット 由布岳と桜島御岳(夏)をチョイス。 写真:筆者提供

お菓子はパッケージ・デザイン、 ティーサロンはインテリアやうつわが最重要事項だ。
パッケージとインテリアで成功した例は、 パリの 「LADUREE」 と台湾・台中の 「日出宮原眼科」 が双璧だと思っている。

さて、 「小楽園」 はそこにもっと不可思議なバイアスがかかっている。
何故にチョコレートが山のかたち? それも春の富士山、 夏の桜島御岳、 秋の由布岳……。
マニアックすぎないか?

小楽園
雛山を運ぶ人形! 写真:筆者提供

小楽園を手掛けた KLOKAは、 「新宿伊勢丹」 や 「銀座三越」 でのヴァレンタインデー・イベントでいつも大行列の人気ブースを創出してきた、 伝説のクリエイター集団。

このところヴァレンタインのチョコレート・バトルには飽き飽きしてしまい、 食指の動くものはほとんどないが、 いつもKLOKAの企画は予想を裏切って面白かった。

このディレクションはアートディレクター矢島沙夜子によるもので、 彼女は10年近く前からアートとお菓子の融合をさまざまなかたちで発信してきた。

私の一番古い記憶では原宿の住宅街にある 「ロケット」 というアートギャラリーでの展示 「Alchemie des Chocolat」 (2014年) で、 溶岩のようにあふれるチョコレートが蛇口から出てくる仕掛けに驚いた。  

KLOKA
「Alchemie des Chocolat」 チョコレートからできあがった王国都市。 「神のたべもの」 と崇められたテオブローマが蛇口から溢れ出す。 こんな物語から生まれたジオラマ。 上写真提供:KLOKA 下写真:筆者提供

続く新宿伊勢丹では、 チョコレートでできた巨大な鉱山から好きなチョコレートを採掘する仕掛けの 「Mt.Isetan Chocolaterie」(2016年)。

KLOKA
「Mt.Isetan Choocokatie by KLOKA」 巨大なチョコレート山脈にある鉱山。 さまざまな地形や地層の中から気に入りの箇所を選んで採掘してもらう仕組み。 採掘した鉱物ショコラはその場で瓶詰めの標本に。 上写真提供:KLOKA 下写真:筆者提供

翌年は銀座三越で、 山から宇宙へと移動し、 チョコレートの惑星やブラックホールを採掘する 「The Chocolate Cosmos」 (2017年)。
その翌年は魔術をテーマにした 「The Wizard of Chocolate by KLOKA」(2018年) の魔術の館。

The Chocolate Cosmos
上)「The Chocolate Cosmos by KLOKA」 チョコレート銀河には大きな月や、 甘い砂漠の星、 謎の氷の惑星、 神出鬼没のブラックホールなどの宇宙が広がる。 星を眺めながら、 掘って欲しい場所を選び、 採掘員にその土地の証明書とともに甘い発掘物を渡してもらう。 写真提供:KLOKA
The Wizard of Chocolate by KLOKA
「The Wizard of Chocolate by KLOKA」 魔術師の館の入り口では不死鳥が出迎え、 ドラゴンや踊るマンドラゴラ、 人魚の水槽など、 あらゆる幻獣がいる摩訶不思議な空間を展開。 「魔法のアイテム」 のチョコレートが選べる。 写真提供:KLOKA

ガラリとイメージが変わったのは、 からくり人形がお盆にお菓子を乗せて現れる銀座三越での 「The Small Utopia by KLOKA」 (2019年)。

The Small Utopia by KLOKA
「The SMALL UTOPIA by KLOKA」。 「かつて人間たちが残した、 桃源郷で働き続けるからくり人形たちが、 何千年ぶりにお客様をお出迎えする」 というストーリーの “OMOTENASHI屋敷” 。 お屋敷から出てきて、 お客様の元へ運び、 またお屋敷の中へ戻っていくのは完全自走システムのからくり人形。 ピンクの立体のきつねの最中の載ったアイスクリームがかわいい。 写真提供:KLOKA

もうおわかりだろうか。
この店は “錬金術” “鉱山” “宇宙” “魔術” そして “桃源郷” など、 これらをテーマに Sweets と Artと出会わせ化学反応を起こしてきた KLOKA の矢島沙夜子の実験の集大成なのだ。
そしてまだまだ、 これからも化学変化はし続けるに違いない。

もうすぐ桃のお菓子も登場と聞いた。
3月は、 この摩訶不思議な店へぜひ。

The Small Utopia by KLOKA
写真提供:KLOKA

<関連情報>

□小楽園
https://www.shorakuen.com/

開店時間:12:00~19:00
定休日:火曜日(不定休あり)
住所:東京都渋谷区元代々木町10-9(代々木上原駅徒歩5分 / 代々木八幡駅徒歩5分)

>ティーサロンの予約
https://www.shorakuen.com/reserve

□ラデュレ
https://www.maisonladuree.com/maison-histoire

□日出 宮原眼科
https://www.miyahara.com.tw/cposf.php?servref=38
https://www.dawncake.com.tw/chocolates/


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2023/03/07

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