Profile
関 直子 Naoko Seki
東京育ち、 東京在住。 武蔵野美術大学卒業後、 女性誌編集者を経てその後編集長を務める。 現在は気になる建築やアート、 展覧会などがあると国内外を問わず出かけることにしている。
代々木上原に不思議なティーサロンがオープンした。
漫画家・羽海野チカさんからの開店祝いの花輪がよく似合う、 コーラルピンクで彩られた外観。
飾り窓には、 桃の木のかたちの盆栽と華やかないで立ちのからくり人形がいる。
ティーサロンの名前は 「小楽園」。 小さな桃源郷とでもいうのだろうか?
店内は壁紙、 タイル、 欄間飾り、 床、 天井までさまざまな異国趣味がミックスされ、 それが共鳴してとらえどころのない魅力を生んでいる。
ショウケースに並ぶのは山のかたちをしたチョコレート 「山菓子」。 そして缶入りのお菓子 「小楽園おこし」。
チェコやモロッコの花の描かれたグラス、 チャイの入ったポット、 さまざまな国の装飾がテーブルに一堂に介して独特だ。
お菓子はパッケージ・デザイン、 ティーサロンはインテリアやうつわが最重要事項だ。
パッケージとインテリアで成功した例は、 パリの 「LADUREE」 と台湾・台中の 「日出宮原眼科」 が双璧だと思っている。
さて、 「小楽園」 はそこにもっと不可思議なバイアスがかかっている。
何故にチョコレートが山のかたち? それも春の富士山、 夏の桜島御岳、 秋の由布岳……。
マニアックすぎないか?
小楽園を手掛けた KLOKAは、 「新宿伊勢丹」 や 「銀座三越」 でのヴァレンタインデー・イベントでいつも大行列の人気ブースを創出してきた、 伝説のクリエイター集団。
このところヴァレンタインのチョコレート・バトルには飽き飽きしてしまい、 食指の動くものはほとんどないが、 いつもKLOKAの企画は予想を裏切って面白かった。
このディレクションはアートディレクター矢島沙夜子によるもので、 彼女は10年近く前からアートとお菓子の融合をさまざまなかたちで発信してきた。
私の一番古い記憶では原宿の住宅街にある 「ロケット」 というアートギャラリーでの展示 「Alchemie des Chocolat」 (2014年) で、 溶岩のようにあふれるチョコレートが蛇口から出てくる仕掛けに驚いた。
続く新宿伊勢丹では、 チョコレートでできた巨大な鉱山から好きなチョコレートを採掘する仕掛けの 「Mt.Isetan Chocolaterie」(2016年)。
翌年は銀座三越で、 山から宇宙へと移動し、 チョコレートの惑星やブラックホールを採掘する 「The Chocolate Cosmos」 (2017年)。
その翌年は魔術をテーマにした 「The Wizard of Chocolate by KLOKA」(2018年) の魔術の館。
ガラリとイメージが変わったのは、 からくり人形がお盆にお菓子を乗せて現れる銀座三越での 「The Small Utopia by KLOKA」 (2019年)。
もうおわかりだろうか。
この店は “錬金術” “鉱山” “宇宙” “魔術” そして “桃源郷” など、 これらをテーマに Sweets と Artと出会わせ化学反応を起こしてきた KLOKA の矢島沙夜子の実験の集大成なのだ。
そしてまだまだ、 これからも化学変化はし続けるに違いない。
もうすぐ桃のお菓子も登場と聞いた。
3月は、 この摩訶不思議な店へぜひ。
<関連情報>
□小楽園
https://www.shorakuen.com/
開店時間:12:00~19:00
定休日:火曜日(不定休あり)
住所:東京都渋谷区元代々木町10-9(代々木上原駅徒歩5分 / 代々木八幡駅徒歩5分)
>ティーサロンの予約
https://www.shorakuen.com/reserve
□ラデュレ
https://www.maisonladuree.com/maison-histoire
□日出 宮原眼科
https://www.miyahara.com.tw/cposf.php?servref=38
https://www.dawncake.com.tw/chocolates/