Profile
関 直子 Naoko Seki
東京育ち、 東京在住。 武蔵野美術大学卒業後、 女性誌編集者を経てその後編集長を務める。 現在は気になる建築やアート、 展覧会などがあると国内外を問わず出かけることにしている。
今、 セシリエ・マンツの展示が都内2か所で行われている。
彼女はデンマークのデザイナーで、 私にとってはインゲヤード・ローマン (スウェーデン) やパトリシア・ウルキオラ (スペイン) と並ぶ、 世界で際立つ女性デザイナーの中の一人だ。
ホルムガードのガラス 「ミニマ」 (2006)、 「スペクトラ」 (2007)、 バング&オルフセンのスピーカー 「ベリオット12」 (2012)、 ポータブル・スピーカー「P2」 (2017) やフリッツ・ハンセンの 「エッセイテーブル」 (2009)、 クヴァドラのテキスタイル、 ジョージ・ジェンセンのリネンなど、 彼女のデザインはすでに目にしているものも多いと思う。
その彼女の名をはっきり意識したのは、 ちょうど1年前の5月に 「マルニ木工」 のショールーム 「maruni tokyo」 で発表された新作家具 「EN」 を見た時だ。
深澤直人とジャスパー・モリソンの家具で構成された 「MARUNI COLLECTION」 に、 もう一人新しい柱となるデザイナーが加わるという画期的なインフォメーションだった。
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/Cecilie_Manz_credit-1.png)
EN はデンマーク語で “ひとつ”、 日本語の “円”、 つながりを意味する “縁” など様々なミーニングを含んでいるという。
丸テーブルと橇脚の椅子 (スレッド・チェア) は全てのエッジが丸みを帯びるように削られ、 滑らかな家具という印象。
それから約半年後、 maruni tokyo では EN の家具と有田で彼女がつくった 「CMA CLAY」 でコーヒーがサーブされるカフェ 「Café MANZ」 というイベントを行った。
彼女のつくった椅子とテーブル、 うつわでコーヒーを味わうという体験をした。
添えられた花や北欧のデニッシュの香りもあって、 日常の中にセシリエ・マンツがあるというのはこういう事なのかと体感したのはこの時だ。
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/IMG_3228.jpeg)
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/DSC0079_f.jpg)
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/DSC0066_f.jpg)
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/DSF5949_f.jpeg)
このイベントでスタッキングと入れ子 (ネスティング) の機能が美しい CMA CLAY に魅せられて、 入れ子フリークの私は大小様々なボールを早速購入した。
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/IMG_3259.jpeg)
あれから半年、 彼女の創作を理解するための展覧会 「TRANSPOSE 発想のめぐり」 展がアートスペース 「BaBaBa」 と 「maruni tokyo」 の二カ所ではじまったというので出掛けた。
BaBaBaでは会場いっぱいに設置された長さ10m のテーブルにクヴァドラのテキスタイル「フロイド」 が敷き詰められ、 その上に彼女の手で様々なものが並べられていた。 “有田の記憶” “創作の現場” “新しいアイデア” “食事の風景” という4つのテーマだという。
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/0-44-credits-Kohei-Yamamoto.jpg)
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/0-51-credits-Kohei-Yamamoto.jpg)
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/0-69_1-credits-Kohei-Yamamoto.jpg)
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/0-4-credits-Kohei-Yamamoto.jpg)
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/0-82-credits-Kohei-Yamamoto.jpg)
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/IMG_6834.png)
最初に置かれているのは、 幼い頃に陶芸家の父母の仕事で来日した際に日本との縁のはじまりとなった有田の粘土。
続いて制作に使う道具、 試作の数々、 和洋が融和するテーブル。 彼女の創作の原点や選びぬいたかたちや素材、 色に満たされていた。
両親の作品集もそこに置かれ、 彼女の父リチャード・マンツの作品に入れ子を見つけ “つながる” ことの重要さを思った。
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/IMG_6872-1.png)
もうひとつの展示会場である maruni tokyo では、 EN の新色と連動する色に特化した 「TRANSPOSE 発想のめぐり-A Hint of Colour」 展を開催。
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/0-85-credits-Kohei-Yamamoto.jpg)
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/0-35-credits-Kohei-Yamamoto.jpg)
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/0-17-credits-Kohei-Yamamoto.jpg)
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/IMG_7053.jpeg)
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/0-125-credits-Kohei-Yamamoto.jpg)
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/IMG_7094.png)
ENのチェアに、 ナチュラル仕上げの無垢材の板座バージョンと新たな4色が加わったという。 そこでこの展覧会は色についての様々な考え方が展開されている。
“日本のカケラ” “グレーな色” “ニュートラル” “カラーワーク” という4つのテーマで、 彼女が色を考える時の核となる思考が示されていた。
「色選びは立体を使う」
ライトグレーは 「私のゼロのトーン」
「ほんのわずかな色の気配だけで十分なこともあります」
有田の磁器用の白に近い粘土にインスパイアされた 「クレイホワイト」、 錆びや漆器など、 自然本来の強い色をイメージした深みのある赤、 迫力ある 「ラスティレッド」、 控えめで主張しすぎない、 淡くかすかな緑 「ダスティグリーン」、 そして会場に置かれた梵音具の吸い込まれるような黒から生まれた 「マットブラック」。
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/EN_2321_chair_maple.png)
5月25日のオープニング・レセプションではこのデリケートな4色と呼応する4種のコーディアルを菓子研究家の福田里香さんが考案し、 まるでアート・インスタレーションのような会場が構成された。
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/5BE7A1C4-B791-444F-8F6F-DD3DFACF23FF.png)
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/00608E21-4B05-4213-8132-6A2F0612370F.jpg)
白のコーディアルは、 エルダーフラワー、 エディブルフラワー、 アールグレイティそして自家製ミルクジャム。
黒のコーディアルは、 ミント、 バニラビーンズ、 くちなし、 カカオ。
赤のコーディアルは、 ビングチェリー、 ローズヒップ、 ハイビスカス、 シナモン、 ジンジャー、 クローブ。
緑のコーディアルは、 青梅、 赤酢、 緑茶、 レモン。
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/1677700F-7B5D-40D0-A8D7-D63A8E337F41.jpg)
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/39BC9C65-A476-4B9B-B1D2-7A8A68ABE971.png)
福田里香さんも、 色を表現する時は香りや味覚に加えてカラースキームをこのようなかたちで設計しているのだと知った。
この人もセシリエと同類の作家なのだと、 改めて確認した日だった。
![セシリエ・マンツ](https://oil-magazine.claska.com/wp-content/uploads/2019/10/CE234B64-3DF5-400F-9149-DDFB45E5B8C5.jpg)
<関連情報>
□「TRANSPOSE 発想のめぐり」
https://bababa.jp/ceciliemanz/ceciliemanz/
会期:2023年5月25日(木)~6月30日(金)
会場:BaBaBa
住所:東京都新宿区下落合2-5-15
定休日:水曜日
営業時間:11:00~18:00
□「TRANSPOSE 発想のめぐり -A Hint of Colour」
https://www.maruni.com/jp/topics/post-40407.html
会期:2023年5月20日(土)~6月30日(金)
会場:maruni tokyo
住所:東京都中央区東日本橋3-6-13
定休日:水曜日
営業時間:11:00~18:00